本課題では,純アルミニウム等の凝着しやすい金属を用いた新しいラッチ機構などを想定した高摩擦表面の創製を目的として,アルミニウムやその他の材料に対して表面テクスチャリング(高さ10~数10ミクロンの微小凹凸)を施して高い摩擦係数を発現する表面を開発した.アルミニウム材料では種々のアルミニウム合金の組合せにおいて,硬度差が最も大きい組合せにおいてより高い摩擦係数が発現された.また,テクスチャを施したサンプルの真空中および大気中摩擦特性の比較により,表面に予め存在する酸化皮膜の影響が支配的であり,微小凹凸の変形にともなって酸化皮膜がより効率的に除去され摩擦界面での凝着を促進したことを明らかにした.また,レーザ加工によるテクスチャではレーザの熱影響によるひずみの発生は表層1~2ミクロンの部分であり,テクスチャ凹凸と比較して十分小さいため摩擦に及ぼす影響は低いことが分かった.ただし,レーザによる加熱・冷却によってより広い深さ範囲において金属組織が変化し,特に適切なレーザ照射条件を選択することによってアルミニウム合金を軟化させると,高い摩擦係数が発現する成果を得た.摩擦係数の数値は,通常のねじ締結面などを想定したあまり清浄では無い面の静止摩擦係数を比べると,アルミニウム合金では摩擦係数が0.45からレーザ加工により0.7と40%の増加が見られた.チタン合金および一般鋼材においても同様の効果を発現し,特にTi-6Al-4Vチタン合金では2.8倍の増加を見せた.多少の予しゅう動を行うことでより高い摩擦に遷移することを明らかにし,ねじ締結面等での有効性を実証した.
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