研究課題/領域番号 |
17K06114
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
北山 哲士 金沢大学, 機械工学系, 教授 (90339698)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 最適設計 / 多目的最適化 / CAE / プラスチック射出成形 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本年度は,プラスチック射出成形における品質および生産性の向上を目的とし,多目的環境における溶融温度,金型温度,射出圧力や射出時間,保圧力などのプロセスパラメータの最適化およびトレードオフ分析法の研究開発を行った.はじめに,そりとサイクルタイムを同時に最小とするようなプロセスパラメータの多目的最適設計を行い,そりとサイクルタイムの間には,明確なトレードオフ関係があることを,シミュレーションを通じて把握した.併せて,保圧工程における圧力プロファイルを変化させる可変圧力プロファイルの最適設計も行った.その結果,従来から広く用いられている一定保圧力を用いるよりも,最適可変圧力プロファイルを用いたほうがそりとサイクルタイムは劇的に改善されることがわかり,検証実験を行った.検証実験の結果,シミュレーションと実験結果は良好な一致を示し,本年度の研究の妥当性を実証した.さらに,プラスチック射出成形における代表的な外観不良の一つであるウェルドラインがあり,ウェルドラインと型締力を同時に最小とするようなプロセスパラメータの最適設計も行った.特に,ウェルドライン温度がウェルドラインの生成に大きな影響を与えるという想定をし,ウェルドライン温度を最大化することでウェルドラインの削減を狙った.一方,型締力は生産性に影響を与え,小さな型締力であれば小型の射出成型機で製品を成形できるため,小さければ小さいほど生産性につながると想定した.この結果,ウェルドライン温度が高くなることでウェルドラインが削減でき,また,型ウェルドラインと型締力の間には明確なトレードオフの関係があることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
射出成形シミュレーションと,機械学習と最適化を融合した技術を用いることで,当年度設定した研究進捗状況はおおむね良好と考えている.特に,可変圧力プロファイルを用いたそりとサイクルタイムの多目的最適設計や,ウェルドラインと型締力の多目的最適設計を行い,シミュレーションに留まることなく検証実験まで行えたことは,大きく評価できる.そりとサイクルタイムのみならず,外観不良の一つであるウェルドラインを考慮する必要性があることを理解できたことは,当初の計画にはなく,大きな成果であり,プラスチック射出成形において,定量的に把握できる品質が多岐にわたることがわかった.3目的以上の多目的環境下におけるトレードオフ分析法については,現在,素案を練っており,特に,バランスの考え方について,その定量的評価法について検討している.3目的以上の競合する目的関数間のトレードオフ分析については目的関数値から定量的に把握する方法が一般的であるが,視覚的かつ直観的にトレードオフ分析ができるツールの開発を次年度以降行う予定である.また,製品形状に沿うような複雑な三次元水管の設計法についても,基礎アルゴリズムを構築しつつあり,シミュレーションで検証する計画をしている.学術論文として3編掲載されており,研究成果の公表も順調であると考えている. よって,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
先に述べた通り,2018年度は以下の点について重点的に研究を行う. 1.3目的以上の多目的環境下におけるトレードオフ分析法として,Star Coordinate Systemを改良した,視覚的トレードオフ分析法の開発を行い,同時にツール化を行う. 2.大域的最適化法を用いた,製品形状に沿うような三次元複雑水管経路の設計法の開発. 3.三次元複雑水管を用いた多目的環境下におけるプロセスパラメータの最適設計.シミュレーションを行い,検証実験を行う.また,三次元複雑水管の冷却性能を調べるため,従来から製作・利用されている直線的水管も用いてシミュレーションを行い,製品の冷却性能や品質に与える影響を精査する.
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