研究課題/領域番号 |
17K06115
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
石田 和義 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (70324176)
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研究分担者 |
寺田 英嗣 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (40262646)
小谷 信司 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (80242618)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | トライボロジー / 光応用計測 / 診断技術 / 画像処理 |
研究実績の概要 |
当該研究の目的は、摺動面反射光の表面性状データ画像処理に基づく摩擦・摩耗遷移のその場判定可能な評価を確立し、多くの回転機械や摺動部に適用可能なデータベースを作成することである。本研究の特色として、摺動面反射光(レーザの散乱光分布)を画像処理する手法のみで摩擦・摩耗遷移のその場判定を実現することである。レーザの散乱光分布で評価するため、摩擦・摩耗遷移のリアルタイムな、その場判定の検出精度向上が期待できる。本研究での実施項目は、表面性状の情報取得と評価の確立、および摩擦・摩耗遷移のその場判定法の確立である。 平成29年度は、摩擦・摩耗遷移評価装置の構築を中心に研究を実施した。当初、既存の摩擦・摩耗試験装置に試料表面からのレーザ反射光をカメラで取得可能な計測システムを組み込む予定であった。しかし、既存の摩擦・摩耗試験装置は小型試料用に製作したため摺動幅が狭く、計測システムによる摺動部へのレーザ照射調整が容易ではなかった。また、当該試験装置では軽荷重用であるため、摩擦・摩耗遷移までの時間を短くすることが困難であった。これらの理由から、当該研究の計測システムに適し、今後の効率的な測定を行うための新たな摩擦・摩耗遷移評価装置を設計・製作した。そして、今後行う実験の条件選定時に必要な指針を把握するため、この新たな評価装置を用いた大接触面圧下で短時間に摩擦・摩耗の遷移が発生すると考えられる条件を実験的に把握した。一方、計測システム内で重要となるカメラ画像の取得とその処理については、レーザ反射光取得用カメラによる基本的な画像処理動作を確認した。以上より、次年度に向けた研究の基礎的な実験環境を構築できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
摩擦・摩耗遷移評価装置の構築に関しては、当初使用を考えていた摩擦・摩耗試験機に計測システムの組み込みが出来なかったため、本研究での使用に適した新たな摩擦・摩耗遷移評価装置の機械的な部分を設計・製作した。その結果、摩擦・摩耗遷移評価装置の完全な構築と調整法の確立には至らなかった。特に、評価装置内に組み込む計測システム部の構築については、当初の予定よりも遅れている。これらの遅延の影響で、表面性状基礎データの取得が出来ていない。 しかし、重荷重を付加できるように新設計した装置で摺動条件の実験的検証を重ねた結果、当該研究を効率良く行うための摩擦・摩耗遷移を短時間で発生させることが可能な各種条件が判明した。この成果は、今後の「表面性状取得画像の特徴値」と「摩擦力・摩耗量」の関連付け等における遷移データの取得が効率良く実施できると考えられるため、非常に有益な結果が得られた。 計画当初の実施項目の一部に遅延を生じているが、今後実施する計測に関して有益な結果が得られている。これらの進捗状況を総合的に自己点検したところ、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、平成29年度に実現できなかった摩擦・摩耗遷移評価装置の構築を早急に行い、表面性状の情報取得と評価を中心に取り組む。 なお、計画当初はレーザ経路の途中に光スキャナを設置し、試料面上の評価部分を複数箇所自動的に取得することで、最終的に表面性状測定精度の向上や摩耗量の推定等を行う予定であった。しかし、本測定方法の実用化を再検討したところ、高価な光スキャナを設置してまでレーザ測定箇所の複数化による利点は少なく、他の評価項目を追加した場合による情報取得と判断のメリットが大きいと考えた。 そこで、レーザ反射光のカメラ画像取得時と同時取得する評価項目として、摩擦力および摩耗量に加えて、白色光源と分光器の組合せによる評価や、摺動部へ照射する照明を工夫して摺動表面の傷の有無を判定するための評価も検討する。これらの評価も加えることで、摩擦・摩耗遷移の状態を可視的に容易に判断できるため、遷移時の検出精度向上を狙うことが見込まれる。 また、信頼性の確保が必要な診断技術の事例調査を行い、この事例の摺動条件に可能な限り近づけて測定データを蓄積することで、摩擦・摩耗遷移のその場判定評価法を実用レベルに近づけるための検証を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、レーザ光源・制御用PC・画像取得用PCが当初予定した金額よりも安価に購入できたこと、摩擦・摩耗遷移評価装置の構築が完了していないため当該計測システムに適した光学部品や計測用センサ類を購入できなかったことが挙げられる。 また、次年度の使用計画としては、当初計画の使用に加えて、新たな評価項目の追加で必要となる物品類に補填して経費を有効に使用する。
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