研究課題/領域番号 |
17K06118
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
小野 勇一 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (50335501)
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研究分担者 |
森戸 茂一 島根大学, 総合理工学研究科, 准教授 (00301242)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 実験応力解析 / 応力・ひずみ計測 / めっき法 / 金属疲労 / 電子線後方散乱回折法 |
研究実績の概要 |
まず,Ni-P-Bめっきの粒成長条件を見極めるために,インコネルにNi-P-Bめっきを施した試験片に対して,雰囲気温度350~450℃において加熱処理を施して,加熱時間と粒成長との関係を調査した.すなわち,XRD法とEBSD法により,種々の条件で加熱処理したNi-P-Bめっきの粒径を調査した.初期の結晶粒径は微結晶であり,XRDのピークはブロードであるとともに,EBSDでも解析が不可能であるが,加熱処理を施すことで,XRDのピークは明瞭になり,EBSDでも粒径が把握できるほど成長する.また,加熱時間と加熱温度の増加とともに粒成長が促進されることも確認でき,通常の金属の再結晶と同様な傾向を確認することができた.次に,得られた結果をもとに,加熱温度,加熱時間および結晶粒径の関係を表す較正式を導いた.この関係を利用すれば,任意の加熱温度,加熱時間に対して粒径を見積もることができるので,この較正式を利用して繰返し負荷試験の条件を決定した.さらに,インコネルにNi-P-Bめっきを施した平滑試験片を用いて,油圧制御式疲労試験機にて,試験周波数1Hzのもとで,加熱温度を一定にした繰返し負荷試験を実施した.応力振幅を2種類に変えて繰返し負荷試験を実施した後,EBSDにより粒径を調査すると,加熱のみの状態よりもさらに粒成長が促進され,応力振幅が大きいほうがそれが顕著であった.したがって,粒成長の応力振幅依存性を確認することができた.以上のことから,Ni-P-Bめっきを用いれば,従来のCuめっきやNiめっきよりも高い雰囲気温度で応力測定が行える可能性があることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の初年度の目標は,Ni-P-Bめっきの粒成長条件を見極めて,粒径の応力依存性を確認することであった.現在までに,Ni-P-Bめっきに加熱処理した結果,雰囲気温度350~400℃で粒成長することが確認できたことと,雰囲気温度,繰返し数を一定にして応力振幅のみを変えた繰返し負荷試験を実施した結果,応力振幅が大きいほうが結晶粒径も大きくなることが確認できたので,ほぼ予定通り進捗しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
前年度までで,Ni-P-Bめっきを従来のCuやNiよりも高温環境下で繰返し負荷試験を実施した結果,粒成長の応力振幅依存性が確認できたので,本手法による応力測定の可能性が示唆された.そこで,本年度はさらに繰返し数を変えた繰返し負荷試験を継続して実施し,結晶粒径を調査する.結晶粒径は,雰囲気温度が一定の場合,繰返し数と応力振幅が大きいほうが大きくなると考えられるので,これを確認する.また,得られた結果をもとに結晶粒径から応力振幅を計測できる較正式の確立を目指す.すなわち,一般に加熱による再結晶粒は加熱温度と加熱時間の関数であり,これらの間の実験式は導かれているので,この実験式をもとに,加熱温度と加熱時間に代わり応力振幅と繰返し数を用いた較正式を導出する.さらに,雰囲気温度を変えた試験も実施して,粒成長の雰囲気温度依存性も確かめ,次年度以降では,雰囲気温度を考慮した較正式の導出を目指す.
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