研究課題
チタン合金といった難削材のニアドライ加工に適合する高性能な油剤を開発するとともに、難削材の加工に最適な複合ニアドライシステムの提案を目的にしている。加工油剤として注目した含酸素化合物の中で、アルコールが、チタン合金の金属新生面に最も高い吸着活性をもち、そこに強く吸着することで潤滑効果を発揮するという一昨年度の検証結果を踏まえ、昨年度は基礎的トライボロジー挙動を検討し、アルコールの高い吸着活性にもとづく摩擦低減効果がニアドライ方式のMQL加工における良好な切削性能をもたらしたと裏付けることができた。一方、一昨年度に改良が完了した複合ミスト供給装置を用い、これまで実施してきた連続切削ではなく、昨年度は断続切削に適用範囲を広げ、チタン合金のニアドライ加工における切削性能を調べた結果、連続切削で有効な冷却効果に優れるクーラントミスト加工に比べ、その効果に劣るMQL加工の方が、断続切削時の工具刃先への熱衝撃を抑制し、工具寿命をより延長できることを見出した。これらの成果をふまえ、本年度は、新たな加工油剤用添加剤として、羊毛に付着する脂質を精製した環境にやさしい天然素材である液状ラノリンを取り上げ、切削性能のさらなる向上を試みた。その結果、液状ラノリンは、チタン合金のMQL加工において、工具寿命を大幅に延長することがわかり、その主成分であるステロール、脂肪族アルコール、脂肪酸、ヒドロキシ酸などの極性基を有する化合物が、金属表面に化学吸着して潤滑膜を形成する油性剤としての効果を発揮することが実証できた。以上のことから、難削材の代表であるチタン合金を対象にしたニアドライ加工において、切削性能に優れる油剤とその組み合わせを確定するとともに、これらの加工に最適な複合ニアドライシステムが提案できた。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Proceedings of the 8th International Conference of Asian Society for Precision Engineering and Nanotechnology (ASPEN2019)
巻: November ページ: 4pages