研究課題/領域番号 |
17K06123
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
海津 浩一 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (50177317)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 機械要素 / リベット / 繊維複合材料 / 異材継手 / 軽金属 / 打抜き加工 / 継手強度 / 軽量化 |
研究実績の概要 |
打抜きリベット締結法はリベットとリベットホルダーを用い,リベットを薄板に打込むことで穴あけ加工を必要とせずに瞬時に薄板を締結して継手を作製できる.本年度は,打抜きリベット締結法により,繊維強化複合材料のCFRP(カーボン繊維強化複合材料)と短繊維を用いたGFRP(ガラス繊維複合材料)を用い,それぞれの複合材料板とアルミニウム合金A6061薄板をアルミニウム合金A7075のリベットで締結できることを明らかにした.しかしながら, GFRPとA6061の継手では,締結部分を切断して詳細に観察したところ,打抜き穴周辺にき裂は見られなかったがリベットの先端の変形が少なくなっていた.またボルト・ナット締結の継手との継手強度の比較を行ったところ,打抜きリベット締結法の継手強度が若干低くなった.リベット先端の変形が小さいことからリベット頭部による座面圧力が小さくなったことが原因と考えられる.またCFRPとA6061の継手の締結部分を切断して詳細に観察したところ,リベットでCFRPを打抜く際に打抜き穴の縁でCFRPに小さな層間剥離が生じた.この継手とボルト・ナット締結の継手について継手強度と疲労強度を比較したところ,打抜きリベット締結法で作製した継手は損傷域を有していたが,継手強度も疲労強度もボルト・ナット締結の継手とほぼ同程度の高い強度を有していた.このことから,打抜き穴の縁での損傷域がリベット頭部で座面圧力を作用させられる程度であり,またリベットの座面圧力が高ければある程度の継手強度と疲労強度をもつことが明らかになった.しかしながら,締結部の打抜き穴の縁のCFRPの損傷域を一層小さくすることにより継手性能を向上させる必要があることが分かった.これらの結果の一部は,日本機械学会講演会で公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,打抜きリベット締結法で繊維強化材料と軽金属の異種材継手を作製するためにリベットとリベットホルダーの形状と材質が繊維強化複合材料の打ち抜いた穴の切り口面の状態にどのような影響を及ぼすかについて,リベットを薄板に準静的に押し込む試験により明らかにすることを計画していた.本年度は,その計画通りに,被締結材料として,繊維強化複合材料のCFRP板とGFRP板,軽金属のアルミニウム合金A6061薄板をアルミニウム合金A7075のリベットで打抜きリベット締結法により締結を試み,CFRP板,GFRP板のどちらもA6061板と締結できることを確認できた.しかしながら,GFRPとA6061の継手では,締結部分を切断して詳細に観察したところ,リベットの先端の変形が少なくなっており,十分な座面圧力が得られていないと考えられること,またボルト・ナット締結との比較においても継手強度が若干低くなっていたことなどから,リベット先端の変形量を大きくするためにリベット形状の再検討が必要なことが明らかになった.またCFRPとA6061の継手の締結部分を切断して詳細に観察したところ,リベットでCFRPを打抜く際に打抜き穴周辺でCFRPに層間剥離が生じ,CFRPの損傷が明らかになった.CFRPの打抜き時の損傷域を可能な限り小さくことで継手強度を一層向上させるために,リベット形状や打抜き条件について再検討する必要があることが明らかになった.ここまではほぼ計画通りであるが,良好な打抜き穴をあけられるリベット形状と材質および薄板の固定条件をLS-DYNAを用いたシミュレーションにより検討することがまだ行えていないことから達成度がやや遅れていると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
リベット締結の方法として,本年度は準静的荷重によるリベットの薄板への打込みを行ったが,現状では良好な打抜き穴が得られていない.そこで,今後は衝撃試験機を用いて、衝撃荷重によるリベットの薄板への打込みが打抜き穴の状態にどのような影響があるのかを明らかにする.衝撃荷重を用いて金属等を打抜くと切り口面の加工精度が向上すると言われており,難加工材料である繊維強化複合材料に対して衝撃荷重の効果により切り口面の加工精度は向上することが期待できる.本年度は,衝撃試験を実施するため,正確な変位を測定できるレーザ変位計の購入を計画していたが,当初購入を計画していたレーザ変位計では測定範囲が不足することが明らかになり,上位機の購入に計画を変更した.上位機は計画より高額になることから本年度はレーザ変位計のヘッド部のみを購入した.次年度にはレーザ変位計のコントローラを購入して衝撃試験に取り組む計画である.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,衝撃試験のために,変位を正確に測定するためのレーザ変位計のヘッド部を購入したが,ヘッド部が高額であったため,レーザ変位計のコントローラまでは購入できなかった.本年度の残額は次年度の物品費と合わせてコントローラ等の購入費にあてることとした.
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