| 研究課題/領域番号 |
17K06127
|
|---|
| 研究機関 | 早稲田大学 |
|---|
研究代表者 |
富岡 淳 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40217526)
|
|---|
| 研究分担者 |
宮永 宜典 関東学院大学, 理工学部, 准教授 (00547060)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
| キーワード | トライボロジー / メカニカルシール |
|---|
| 研究実績の概要 |
平成29年度に得られた成果をもとにして，平成30年度は，平行なしゅう動面間における新しい平均流モデルを確立を目指した．平均流モデルは，しゅう動面における表面粗さの影響を平均化することによって流量係数に集約した修正レイノルズ方程式を導出し，流量係数は等しい統計的性質をもつ表面粗さ分布をパラメータとした期待値として求められる．しゅう動面における表面粗さ分布の設計指針を確率論的に得ることができるが，従来の平均流モデルは，しゅう動面が平行なメカニカルシールに適用しても表面粗さの影響を十分に評価することができなかった．本研究においては，この問題を解決するために， 従来の平均流モデルで考慮されていなかった以下の係数：（１）側方漏れを表すせん断流量係数，（２）粗面の相対運動によって生じる付加的な流体膜圧力を表す修正係数，を導入した．これによって，この問題の解決を目指した．
さらに，表面粗さ分布における統計的性質，すなわち「自乗平均粗さ」，「歪み」および「尖り」が流量係数に及ぼす影響を検討した．コンピュータによって任意の統計的性質をもつ表面粗さ分布を作成し，統計的性質を表すそれぞれのパラメータが表面粗さ形状に及ぼす影響を明らかにした．また，流量係数，流体膜圧力の修正係数およびその他の係数の算出法を検討した．
また，新しい平均流モデルを用いたメカニカルシールの潤滑特性解析手法を確立を目指した．すなわち，メカニカルシールしゅう動面で発生する圧力，摩擦力，漏れ量が予測できるようにした．
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの研究の達成度はおおむね順調であるが，研究成果を論文として公表する作業に多くの時間を費やしたため，必要な実験を予定通りすることが出来なかった．
特に，血液シール下特有の付着物の有無や摩耗特性を明らかにする必要があるが，しゅう動実験後に，血液のタンパク質が付着していないかなどを確認できなかったことが大きい．確認するためには，実験前後のしゅう動面のSEMによる表面観察および表面分析を行う必要があると考える．
その他にも，研究成果を国内学会や国際会議で報告する予定であったが，まとめるのに時間がかかったため，十分に行えなかった．
|
| 今後の研究の推進方策 |
今後の推進方法を．以下に示す．
平成29，30年度の得られた成果を基にして，令和元年度は，血液シール下特有の付着物の有無や摩耗特性を明らかにする予定である．すなわち，実験前後のしゅう動面のSEMによる表面観察および表面分析を行い，血液シール下特有の生成物や摩耗特性を明らかにする．
また，表面粗さ分布における「自乗平均粗さ」，「歪み」および「尖り」は，等しい統計的性質をもつ表面粗さ分布をパラメータとした平均値として求められるが，側方漏れに関するせん断流量係数および流体膜圧力の修正係数は平均値に対して係数のばらつきが無視できないほど大きいかどうかを検討する．また，これらの値が流量係数および流体膜圧力の修正係数に及ぼす影響を検討し，表面粗さ形状とこれらの係数の関係について考察する．
提案した平均流モデルを用いて，しゅう動面のすきまの大きさ，漏れ量および摩擦係数を求めるメカニカルシールの潤滑特性解析手法の確立を目指す．これらの潤滑特性の解析結果を従来の平均流モデルを用いる場合と比較し，本解析手法の有効性を検討する．
以上の研究を通し，血液シール下におけるメカニカルシールの潤滑特性を明らかにする．また，この研究を，各種条件を設計パラメータとして行い，人工心臓用メカニカルシールのしゅう動面の潤滑特性を明らかにし，シールしゅう動面の設計に有用な指針を得ることを目標とする．さらに，ここまでに得られた研究成果を取りまとめ，その成果の発表を行う．
|
| 次年度使用額が生じた理由 |
（理由）国内会議や国際会議での発表が準備不足のため，いくつか断念した．また．若干の実験の遅れのため，消耗品や備品の購入が少なかったため，予定より使用額が少なかった．しかし，この遅れは取りかえせる見込みが立っている．
（使用計画）やり残している実験も多くあるため，それに対して，試料などを購入する予定である．本研究で得られた成果は，随時論文発表を通じて発信する予定である．論文別刷費用はこれに当てるために必要である．また，研究成果の発表は国内外の学会およびシンポジウム等において，年に数回程度行う予定であり，そのための交通費，参加費，日当，宿泊費として，事前に提出したとおり使用予定である．
|
