平成29,30年度の得られた成果を基にして,令和元年度は,平行なしゅう動面間における新しい平均流モデルの確立を目指した.すなわち,この問題を解決するために, 従来の平均流モデルで考慮されていなかった以下の係数:(1)側方漏れを表すせん断流量係数,(2)粗面の相対運動によって生じる付加的な流体膜圧力を表す修正係数,を導入した.これによって,この問題の解決を目指した.さらに,表面粗さ分布における統計的性質,すなわち「自乗平均粗さ」,「歪み」および「尖り」が流量係数に及ぼす影響を検討した.コンピュータによって任意の統計的性質をもつ表面粗さ分布を作成し,統計的性質を表すそれぞれのパラメータが表面粗さ形状に及ぼす影響を明らかにした.また,流量係数,流体膜圧力の修正係数およびその他の係数の算出法を検討した. また,新しい平均流モデルを用いたメカニカルシールの潤滑特性解析手法の確立を目指した.すなわち,メカニカルシールしゅう動面で発生する圧力,摩擦力,漏れ量が予測できるようにした.提案した修正平均流モデルを用いて,しゅう動面のすきまの大きさ,漏れ量および摩擦係数を求めるメカニカルシールの潤滑特性解析手法の確立を目指した.これらの潤滑特性の解析結果を従来の平均流モデルを用いる場合と比較し,本解析手法の有効性を検討した. 以上の研究を通し,血液シール下におけるメカニカルシールの潤滑特性を明らかにした.また,この研究を,各種条件を設計パラメータとして行い,人工心臓用メカニカルシールのしゅう動面の潤滑特性を明らかにし,シールしゅう動面の設計に有用な指針を得ることを目標とした. さらに,ここまでに得られた研究成果を取りまとめ,その成果の発表を行った.
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