研究課題/領域番号 |
17K06129
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
石川 憲一 金沢工業大学, 名誉学長, 教授 (00064452)
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研究分担者 |
畝田 道雄 金沢工業大学, 工学部, 教授 (00298324)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 日本刀 / 美 / 作刀評価 / 設計法 / 作刀 |
研究実績の概要 |
平成30年度における本申請研究は,国宝や重要文化財に指定される日本刀,並びに現代刀匠による新作日本刀のそれぞれの図録を参照することを通じて,デジタルアーカイブ分析に基づく「形状美」,すなわち,日本刀形状の特徴抽出を継続して実施した.加えて,新作日本刀を対象に地鉄の要素が評価(審査)結果に及ぼす影響の解明を試み,これらの結果を踏まえて,新作日本刀の2次元設計,並びに現代刀匠と刀剣研師の協力による第1次作刀に成功した. 具体的な実施項目は次のとおりである. (1)日本刀の「形状」「反り」「刃文」「地鉄」「樋」等を対象にしたデジタルアーカイブの継続と特徴分析及び解明:日本刀の製作を特徴づける一つの作刀法である「相州伝」に着目し,国宝や重要文化財に指定される日本刀の特徴をレーダチャートによって解析するとともに,現代刀匠による作品も同様に解析した.それを通じて,現代における審査会において重要視されると考えられるポイントを継続して整理した.とりわけ,地鉄については現在刀匠による作品を評価する講評文のテキストマイニング分析を試みることによって,審査結果に及ぼす地鉄の重要要素の抽出を行った. (2)新作日本刀の作刀に資する科学的考察に基づく押し形の設計と第1次作刀の実施:現代刀匠による多数の作品と審査結果を数値解析と統計(加重平均法)の観点から考察することを通じて,科学的アプローチによる押し形設計を試みた.具体的には,現代刀匠による新作日本刀の図録データから日本刀の形状について,「内挿法」と「近似法」の双方を適宜用いることによって,「樋」を除く全ての要素に至るまでの2次元設計(図面作成)に成功した.そして,設計図面,並びに上記(1)における地鉄の分析結果を作刀を依頼する刀匠並びに刀剣研師へ提出し,第1次作刀に成功した.そして,本年5月に開催される日本刀展覧会に向けた審査出品を果たした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で記したとおり,おおむね順調に進展している.とりわけ,平成30年度における最大の課題である科学的考察に基づく新作日本刀の設計と第1次作刀に成功し,現在,審査出品を果たしたことは大きな成果であると判断している.最終年度となる平成31年度(令和元年度)においては第1次作刀の審査結果を踏まえた第2次作刀に挑むことになる.
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今後の研究の推進方策 |
申請調書にも記載したとおり,多様な専門を有する人的ネットワークを活用しつつ,独創性ある本研究を進展させる.
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次年度使用額が生じた理由 |
申請調書に記載したとおり,本研究では日本刀の作刀評価・設計法の実証として,現代刀匠と刀剣研師に科学的アプローチによって設計した押し形に基づいて作刀及び研磨を依頼し,それの審査会出品を果たすとともに,第三者評価を受けることを一つの目的としている.本申請研究の採択後,間接経費もあって,当初予定していた直接経費が減額されたことを受けて,平成30年度(第2年度)と平成31年度(令和元年度)(第3年度・最終年度)に実施する第1次・第2次作刀用の予算をそれぞれ確保するため,平成29年度(第1年度)の予算使用をできる限り削減したためである.したがって,次年度使用額が生じているが,研究は計画通りに進展しており,特段の問題は無いと判断している.
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