本研究では,鋼への水素侵入防止を目標に,DLCコーティングの効果を検討した.安定同位体を利用し,ToF-SIMSを用いて,潤滑油の分解で生成した水素の鋼への侵入過程を可視化したとともに侵入量を定量化した.軸受軌道盤にDLCをコーティングし,摩擦疲労実験を行った結果,水素の侵入量が大幅に減少したことが分かった.DLCの水素侵入抑制効果の有効性が確認できた.DLCは低摩擦熱による潤滑油の熱分解を抑制できたとともに,トライボ化学分解も大幅に抑制したと考えられる.本研究で得られた成果を用い,産業界で課題とされる水素脆化型の早期転動疲労剥離の問題解決が可能となり,燃費向上や省エネルギーにつながる.
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