研究課題/領域番号 |
17K06133
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研究機関 | 長野工業高等専門学校 |
研究代表者 |
岡田 学 長野工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (70249788)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ねじ / 加工 / 超音波振動 |
研究実績の概要 |
小径の溝無しタップに超音波振動を与えながらめねじ加工を行った。めねじの加工で主流になっているタップ加工が切削加工であるのに対して、溝無しタップによる加工は切屑を出さず、塑性変形によってめねじを形成する。 加工するねじのサイズは、一般的に市販されている溝無しタップの最小の呼び径であるM1とした。めねじ加工を行うときの回転速度は、電動回転ステージに被削材を取り付けて5rpmの一定速度で回転させた。超音波振動子の振動を円錐型振動体(ホーン)によって振幅を拡大してタップを加振しながら加工した。超音波振動の周波数は、28kHz, 40kHzの2種類とし、振動を与えない場合についても実験を行った。ファンクションジェネレータで各周波数の正弦波を発生させて、それを増幅器で増幅して振動子を駆動した。振動周波数によって振動の波長が変化し、共振するホーンの長さが異なるため、ホーンは各振動周波数ごとに製作した。被削材はアルミ合金A5052の板で、厚さは3mm。めねじ加工の下穴径は0.88mmとした。 実験の結果、加工トルクは各タップとも、振動が無い場合に比べて振動を与えた場合の方が増加した。振動を加えた場合に加工トルクが増加した理由は、超音波接合などに見られる接触面の凝着促進効果によるものと思われる。 その一方で、振動を加えた場合の加工トルクは振動周波数が高い方が小さかった。周波数を高くすることによって、Blaha効果、摩擦低減効果及び潤滑促進効果、ハンマリング効果等による加工抵抗の低減効果が、凝着促進効果による効果を上回ったものと思われる。 加工しためねじの断面を観察すると、超音波振動を加えた場合の方がねじ山が頂点付近まで高くきれいに形成されていることが確認できた。超音波振動によるBlaha効果(塑性変形を促進する効果)によるものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、超音波振動が加工トルクに与える影響について、2つの周波数の超音波振動について実験を行った。 さらに、加工しためねじの断面を顕微鏡で観察し、溝無しタップの加工における課題の一つである、塑性変形によるねじ山の頂点付近の成形性についても評価した。超音波振動を加えた場合の方が、ねじ山を高くきれいに成形できることが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度については予定通りにタッピンねじの締結特性の研究を行う予定である。被締結物に下穴加工だけを行い、塑性変形によってめねじを形成しながら締結を行うタッピンねじは、溝無しタップと同様の超音波振動がめねじの塑性加工に与える影響と、研究代表者ら以前に行った超音波振動がねじの締結に与える影響の、両方が関係する複合的な現象であるので、その両面から観察と考察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入品の予定購入価格に対して、実際の購入価格が時期により、納入業者により、ある程度変動したことなどの影響から、次年度使用額が26千円生じた。
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