研究実績の概要 |
タップホルダに十字穴付き小ねじ用の工具(ドライバービット)を取り付けてタッピンねじの締付の実験を行った。 タッピンねじのサイズは、一般的に市販されているタッピンねじの最小の呼び径であるM2とした。締付を行うときの回転速度は、電動回転ステージに被削材を取り付けて12rpmの一定速度で回転させた。超音波振動子の振動を円錐型振動体(ホーン)によって振幅を拡大してドライバービットを加振しながら加工した。超音波振動の周波数は、28kHz, 40kHzの2種類とし、振動を与えない場合についても実験を行った。ファンクションジェネレータで各周波数の正弦波を発生させて、それを増幅器で増幅して振動子を駆動した。振動周波数によって振動の波長が変化し、共振するホーンの長さが異なるため、ホーンは各振動周波数ごとに製作した。被削材はアルミ合金A5052の板で、厚さは3mm。タッピンねじの下穴径は1.6mm,1.7mm,1.8mm の3種類を試した。 タッピンねじの評価項目としては,ねじ込みトルクの測定,ねじ山の成形性についての顕微鏡観察などを行った。ねじ込みトルクの最大値は下穴径1.6mmの場合に無振動が8.39cNm, 28kHzが6.82cNm, 40kHzが4.92cNmであり、高い振動周波数で大きなねじ込みトルクの低減効果を得た。ねじ山成形性については、下穴径1.6mmの場合に形成されたねじ山高さが、無振動で0.254mm、28kHzが0.277mm、40kHzが0.301mmであり、高い振動周波数でねじ山成形性がより促進された。周波数を高くすることによって、Blaha効果(塑性変形を促進する効果)、摩擦低減効果及び潤滑促進効果、ハンマリング効果等が大きくなり、ねじ込みトルクの低減及びねじ山成形性の促進に結びついたものと思われる。
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