化学プラントなどで使用される配管系のガスケット付きフランジ締結体は、高い内圧と高温の温度条件下で使用される。フランジ締結体では、温度変化による配管の熱膨張・収縮による配管軸方向の荷重に加えて、自重や地震などによる曲げ荷重も考慮する必要がある。研究実績の概要は次の通りである。 (1) 高温下でのガスケット特性試験:現有の高温ガスケット試験装置を用いて、PFTE(四ふっ化エチレン)系ガスケットを対象として、変形特性測定を実施した。PTFE系ガスケットは温度が上昇すると軟化してフランジ面間を流動するため、厚さが減少する。 (2) 複合荷重を受けるフランジ締結体の漏えい特性試験:本研究で提案した試験装置では、材料試験機などの大がかりな設備を使用することなく、簡易な油圧シリンダーを利用した負荷装置により、配管試験体に,引張りと曲げの複合荷重を作用させることができる。試験体からの漏えいを、マスフローメーターにより高い感度で測定した。試験結果から、配管に作用する曲げモーメントが大きいほど漏えいが発生しやすく、また、配管に作用する軸方向荷重が増大するほど、漏えい開始時の曲げモーメントが小さくなることを明らかにした。複合荷重下での漏えい開始時の条件に関して、実用的な表示方法を提案した。フランジ締結体の組立て時に十分な密封性を確保できるボルトの初期締付け力が与えられていれば、複合荷重の作用下でも大規模な漏えい発生の懸念は低いといえる。 (3) フランジ締結体の漏えい開始時のガスケット面圧:ガスケット付きフランジ締結体に複合荷重が作用する際の漏えい開始時のガスケット面圧に関して、有限要素解析により解析した。複合荷重の作用により、引張り側となるガスケット面の面圧が低下し、ガスケット外周部の面圧が限界以下になると漏えいが発生することを明らかにした。この解析結果は実験結果と対応するものである。
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