令和元年度はまず、フライス加工技術とC02レーザ加工技術の適用により中・小の油溝を同時に設けた場合について、レーザ加工油溝がある場合とない場合の検討をした。結果、レーザ加工油溝がある場合は低速域でしゅう動摩擦係数が高く、摩擦低減に有効でないことがわかった。フライス加工油溝とくぼみを有する複合金属製固定試験体と金属製往復しゅう動体とで、くぼみ配列と当たり面積率がしゅう動摩擦係数に及ぼす影響を調べた。結果、くぼみ配列を油溝軸線に対して鏡像(線対象)とした場合が、混合潤滑条件下でしゅう動摩擦係数が低かった。このことから、しゅう動方向に対してのくぼみ間距離の長短がしゅう動摩擦係数の大小に関係することがわかった。また、当たり面積率を約75%とした場合が、混合潤滑条件下でしゅう動摩擦係数が低かった。 次に、油溝単独および油溝とくぼみを有する複合金属製固定試験体とガラス製回転しゅう動体を用い、潤滑油の拡張や保持の様相を観察することで、油溝角の面取り処理の効果を調べた。結果、C1面取りした場合が最もしゅう動摩擦係数が低かった。これは、溝の角部の処理を加えることによって、油溜率が高くなり、しゅう動摩擦係数の低減につながったといえた。さらにくぼみ-油溝複合試験片を用いた観察実験では、本来油膜保持の役割を持つくぼみは、油溝とつなげることによって拡張機能の役割に変化したことがわかった。 工作機械案内面を研究対象にし、機械加工による表面テクスチャリングがしゅう動摩擦抵抗に及ぼす影響を調査することを目的として3か年研究した成果は以下のようであった。摩擦面に間隔を小さくした複数のくぼみを設ければしゅう動摩擦係数の低減が可能であること、油溝を設けるとしゅう動摩擦係数が極端に大きくなることがわかった。ただし、油溝角部に面取り処理を施すとしゅう動摩擦係数増加を抑制することができることがわかった。
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