研究実績の概要 |
平成30年度は,風洞実験を中心に乱流遷移を起こしやすい条件について研究を進めた.まず,攪乱の導入装置の開発を進め,スピーカーと接続したスパン方向に並んだ3つの小孔からなる装置を製作した.この装置を用いて,平板層流境界層に対して壁面から短時間の噴き出しと吸い込みを行い,境界層内に部分的に乱れやすい領域を作り出した.生成された領域は,流れ方向に伸びたストリーク状の低速及び高速領域を内包していた.次いで,この局所的に不安定な領域に対して下流で噴流を噴射し,弱い刺激でも局所乱流領域が発生しやすい条件を探った.まず,噴流を噴射する最適なタイミングについて調査した.生成した不安定領域が下流の噴射孔の真上を通過するタイミングを早い順にA, B, C とし, 各タイミングで噴流を噴射したところ,いずれの場合でも局所乱流領域が生成され, その噴流の噴射速度は単に層流境界層中に噴射するよりも小さくて済むことがわかった.また, その効果を比較すると,不安定領域の中心が通過するタイミングB で噴流を噴射するのが最も効果的であった.続いて,流下する不安定領域に対してスパン方向に異なる位置から噴流を噴射し,相対的な位置の影響を調査した.その結果,このケースでは,タイミングB よりも早いタイミングで噴流を噴射したほうが乱れの生成に効果があることがわかった.しかし, その効果は噴射位置をスパン方向にずらす前と比べると小さく,噴流のスパン方向位置によって乱流領域生成に効果的なタイミングが異なることがわかった.さらに,主流速度の27 %の強さの強い噴流を噴くことで局所乱流領域を発生させ,その成長についても調べた.その結果,下流で形成された局所乱流領域は乱流斑点であることがわかった.また,上流で生成した不安定な領域は,乱流斑点の生成には効果があるもののその成長には寄与しないことが明らかとなった.
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