研究課題/領域番号 |
17K06148
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
白崎 実 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (50302584)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 計算流体力学 / 固気液3相流れ / 自由界面 / 生物流体 / 魚の遊泳 |
研究実績の概要 |
魚の遊泳は身近な現象でありながら詳細が明らかではないことも多い.一部の魚は水面付近を跳躍しながら遊泳するが,その理由は諸説あるものの必ずしも明らかにはなっていない.水面付近では,通常の遊泳を行うよりも跳躍を伴う遊泳を行った方が造波抵抗や発生した波による影響を避けることができることから,離着水時に生じる抵抗の増加を考慮しても,力学的には総合的に有利なのではないかという仮説の検証を試みる.本研究では,特に水面近くにおける魚の遊泳,急加速,そして跳躍に至る一連の運動について,魚が持つ筋力やエネルギーを考慮した自身の変形による自律推進についての解析を計算流体力学により実施する.本研究の成果は,現実の魚の遊泳挙動の把握の他,魚型ロボットの水面付近での効率的な遊泳,制御につながる可能性がある. 本年度は,まず,昨年度に導入した,背骨を考慮し,この背骨を移動させ,関節の位置,角度をもとに線形ブレンドスキニング法によって魚モデル全体の表面点群データを変形させる2次元モデルを3次元モデルへ拡張した.次に,これまで背骨を含めた場合も含めて強制的に「変位」を与えていた計算モデルから,筋力を模した力によって背骨が動き,魚の変形と流体から受ける力との相互作用を考慮した計算モデルについて取り組んだ.まずは連結された背骨のみの単純化された2次元モデルを対象とした.現時点では,連結された背骨の拘束力の取り扱いが容易となることから,背骨の運動をLagrangeの運動方程式により表現するとよいことがわかった.また,対象としている現象が混相流れと変形する物体との連成という複雑な現象の数値シミュレーションであるため,開発した計算プログラムの信頼性を確認する上で検証実験を実施する必要があり,本年度は,そのための予備的な実験に取り組んだ.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水中を遊泳するのと跳躍を伴う遊泳のどちらの遊泳方法が有利であるかの比較では,これまでは同一の変形を行った場合にどちらの遊泳方法が一定距離を遊泳するのに要する時間が短いかによって論じてきた.平成29年度の取組みにより,流体中を変形により推進することによって消費するエネルギーに着目することにより両遊泳方法の比較しやすくなること示すことが出来た.また,背骨の骨格を与えた変形モデルを導入することにより,これまでの変形モデルでは行うことが出来なかったターンする遊泳を扱うことが出来るようになった. 平成30年度の取組みにより,これまで背骨を含めた場合も含めて強制的に「変位」を与えていた計算モデルから,筋力を模した力によって背骨が動き,魚の変形と流体から受ける力との相互作用を考慮した計算モデルの構築に目処がついた.また,開発した計算プログラムの信頼性を確認するための検証実験については,予備的な実験に取り組んでいる.以上のことから,一部当初の研究計画と前後している項目はあるものの,研究はおおむね順調に進んでいると言える.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,これまで取り組んで来た内容を統合し,流れの中で魚が自身の筋力によって変形する3次元モデルにより筋力と流体との相互作用のもとでの自律推進を取り扱う.水面近くでの遊泳,急速に方向転換する遊泳,そして跳躍を含んだ遊泳についての解析を行う.また,平成30年度に行った予備実験をもとにして,この計算プログラムの妥当性を検証するための実験も実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
開発した計算プログラムの妥当性を検証するための実験が当初の予定よりやや遅れ,今年度内はその予備的な実験にとどまった.このため,実験を中心とした必要な機材の購入時期がずれ込み,次年度への繰り越しが生じた.これらの予算は,次年度に有効に利用する予定である.
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