研究課題/領域番号 |
17K06151
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊藤 高啓 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (00345951)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 接触角 / 濡れ / 界面 |
研究実績の概要 |
固体表面と液体表面のなす角である接触角は液体の濡れの指標としてもっとも重要なパラメータである.一般に濡れの先端である接触線が運動している際の接触角(動的接触角)は静止時の値(静止接触角)とは異なる値となる.理想的な平滑面上での動的接触角は理論的に求められているが,工学上重要となる不均一表面(凹凸や化学的不均一)での動的接触角については未だ汎用性のある理論モデルが構築されていない.本研究では人工的に表面に作られた微細な凹凸を持つ表面における接触線の挙動および接触角の特性について実験的に明らかにすることを目的とする.本年度は昨年度同様2次元の溝状の凹凸を持つ平面を対象としつつ精度(再現性)を向上させて傾向を明確にすることを第一目標とした.試料は昨年度と同じく,熱酸化膜付きSiウェハーを素材とし,フォトリソ・RIE工程からなるMEMS加工により300nm,幅10~20μmの溝を掘ったものとした.今年度はRIEによる溝加工エッチングのあと,全面を再度ごく短時間エッチングする工程の追加により,凸部と凹部の差異のみでなく,試料間の差異も低減させることができた.一方,撮影条件については,新たにレーザーシート光学系のレンズを加えてシートの厚さおよび幅を最適化することにより,接触線近傍の明度が改善した.これらの改善後に得られたデータでは溝の間隔が狭ければ狭いほど,動的接触角は大きくなることが明らかとなった.また,データの取得と並行して応力バランスに基づいた界面形状の時間発展モデルを構築した.現在のところ,角部からの解放時における接触角の急速な低減部分のみであるが,初期の界面形状として実験で得られた形状を代入ことで,極めてよく実験結果を再現することがわかった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
再現性が昨年度と比べ大幅に向上したことにより,間隔の影響の定量的な差異の検出や,基礎モデルの検証に耐えうるデータと取得できたため,概ね順調と判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
構築したモデルと実験結果の差異が大きいのは接触線が固着している期間である.この期間の差異として考えられるものは溝角部の非直線性および溝幅が有限であることの効果が考えられる.前者はエッチングの際溝角部の一部が割れたりフォトリソグラフィでの転写のぼけによって引き起こされる揺らぎによるものと考えられる.このような切れ込みが存在する場合には切れ込みから流体が角部を容易に前進すると考えられる(解放時の接触角が減少する).これは角部の効果を変えていることになるので,角部の状態のコントロールをした試料を用いた測定を行う.また,溝幅が有限であることの影響にいては2018年度に行った接触線形状測定を改善し,接触線の形状の時間変化をより精度よく追跡することでこの溝幅の影響を明確にする.
|
次年度使用額が生じた理由 |
角部に固着している間の挙動の不一致を明確にする手法として照明の改善と撮影の改善が考えられるが,それらのうちいずれがより効果的かの判断が遅れているため,機材の購入が遅れた.最近の結果で概ね方針は得られているので,研究そのものに大きな遅れはない.
|