本研究では、高い粘性を持つ粘弾性流体中に設置された微小気泡について、数百Hz程度の圧力振動場において気泡界面近傍で形成される特異な流動構造を活用し、ガスの吸収・反応など気液界面での物質移動速度の大幅な向上を目指す。昨年の研究より、収縮時のみにNegative Wakeが発現する特異な流動構造に関して、伸長変形流動が生じることが示唆された。そこで、ゾル状態のゼラチン水溶液を温度制御しながら徐々に冷却し、気泡径が制御された微小気泡運動を観察した。気泡下部にNegative Wakeが形成される状況を観察し、ゲル化点近傍まで冷却されると特徴的な流動構造が発現するようになった。この発現に必要な条件についてレオメーターによる粘弾性データや発現する過程を偏光高速度カメラによる二次元分布などのデータ収集し、整理を行った。また,圧力振動が気泡の上昇速度に及ぼす影響について定量的に検討するために非定常非ニュートン有限要素解析を行った。この解析では、圧力振動や気泡界面近傍における流動や界面張力などの力のつり合いによって気泡界面形状が決定される仕組みが考慮されている。気泡の上昇速度は、静止流体から得られた気泡上昇速度よりも大きく、気泡の上昇速度を決定する因子として、気泡近傍のみかけ粘度の減少に加えて、気泡近傍の流動が関係することが判明した。また,膨張時の気泡上昇速度に比べて収縮時における気泡上昇速度の方が大きいことが実験的に確認されていたが,今回の数値解析でも同様の傾向を確認することができた.これらの結果については、化学工学会年会、日本機械学会年次大会、流体工学部門講演会、レオロジー討論会、プラスチック成形加工学会、分離技術会、第18回アジア太平洋化学工学国際会議(APCChE2019)にて報告した。
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