本研究は乱流境界層の外層におけるエントレインメント機構を変動速度の5成分分割とそれに基づく運動方程式を用いて解明するものである。乱流境界層は局所相似性である壁法則および後流法則により普遍性が表現され、流れ場の予測と制御がなされている。壁法則に比べ後流法則は圧力勾配などの外力の影響を強く受ける。外力などの影響を論理的に表現することが必要とされ、エネルギー変換を議論する基になる方程式が必要とされた。この要求について、外層における乱流―非乱流のエネルギー変換を数式として表し、定量的考察を可能とするため、変動速度の5成分分割による輸送方程式を導き、乱流境界層の解明に取り組んだ。 順圧力勾配が作用する乱流境界層を対象とし、壁法則および後流法則などの局所相似性により表現した場合の定量的特性を確認した。定量的表現において重要となる壁面せん断応力は直接測定およびサブレイヤープレート法による客観性の高い測定値を採用した。壁法則においては、逆圧力勾配下において過去に提案した修正法が有効であることを確認した。外層においては、順圧力勾配の影響により後流強さが消失することを発見した。後流強さの変化について、従来の乱れエネルギー方程式の拡散項と変動速度の三重積との関係を調査し、相関があるとされる推定の妥当性を得た。 外層の乱流ー非乱流界面研究のため、識別法の吟味を行った。零圧力勾配下の乱流境界層において豊富な実験成果があり、それらを基準として識別法の吟味を行った。零圧力勾配下における乱流境界層において、従来から広く認められている間欠係数の分布が得られる検出スキームを開発した。乱流ー非乱流に分割した統計量を取得し、乱流拡散における変化が乱流領域によることを確認した。5成分分割に基づく輸送方程式を用いて解析し、エントレインメントに寄与する流体の運動を始めて特定し、圧力勾配の影響を把握することが可能となった。
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