研究課題/領域番号 |
17K06168
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
石川 仁 東京理科大学, 工学部機械工学科, 教授 (90311521)
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研究分担者 |
青野 光 東京理科大学, 工学部機械工学科, 助教 (10623712)
本阿弥 眞治 東京理科大学, 工学部機械工学科, 教授 (30089312)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プラズマアクチュエータ / 抵抗低減 / モーフィング / 流れの制御 / 円板 |
研究実績の概要 |
本研究では,流れの中におかれた物体に作用する流体抵抗を,プラズマアクチュエータで生成したジェットや渦によって物体周りの流れを変化させ,物体形状そのものの変形によって得られるのと同等の抗力低減を得る,フローモーフィング技術を創発することを目的とする. 本年度では,別の抗力測定装置を新たに製作し,異なる条件下での測定を行った.新たな装置は,抗力の作用方向が水平方向であるので,重力やプラズマの電源ケーブルの張力等,抗力値に影響する因子を取り除くことができた.抗力測定のレイノルズ数は,昨年度までの実験と同じRe=5,000とRe=10,000に設定した.パラメータスタディとしてプラズマ電極径については20mm,30mm,および40mmを,プラズマの駆動条件については,電圧が5,6,7および8 kV,周波数が6,7,8,9および10 kHz を試した.その結果,エッジ径の効果については電極径が大きいほど,電圧および周波数の効果については値が大きいときが,それぞれ抗力低減の効果が大きくなった. 次にフローモーフィング時の円板周りの流れの様子を,スモークワイヤ法による可視化した.その結果,電極径が小さい20mmおよび30mmの場合には,本研究の当初コンセプトのとおり,円板中心付近で流れが流線形状に変化する様子が確認された. 数値シミュレーションでは,予定通り,3次元に拡張した計算を行った.ジェット流速の増減パラメータに相当する数値モデルの体積力Dcを0.025,0.05および0.1と変化させ,また実験と同じプラズマ電極径20mmおよび40mmのものを計算した.数値シミュレーションによっても,実験と同程度の抗力低減効果が確認され,大きな低減効果を得られる電極径やDcの条件も実験とほぼ一致した.また実験では計測の難しい,円板表面上の圧力分布を計測することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に新たな抗力測定装置を製作し,昨年度と別の装置で実験を行ったことで,本研究で提案するフローモーフィングの再現性を確かめることができた. 流れ場の測定については,予定どおりPIVによる静止流体中での誘起プラズマジェットの測定を実施した.円板正圧面上での誘起ジェットの衝突の様子と速度分布を精度良く求めることが可能となった. 可視化,および数値シミュレーションにより,フローモーフィングの抗力低減メカニズムには,異なる2つの渦構造が影響することが考えられる.ひとつは本研究の当初コンセプトのとおり,円板正圧面中心付近に形成される渦構造であり,これは円板前方の流れを流線形のそれのように変化させている.いまひとつは円板端の近くにはく離泡がドーナツ状に形成される,いわば渦輪のような構造である.この渦輪構造は円板端からはく離する流れの角度を減少させ,後流の幅を小さくしている.運動量保存則から考えると,後流の幅が減少すると抗力も減少する.これははく離泡の分離流線付近の流れが円板表面の流れを加速することにより,はく離流れの角度が減少する新しいフローモーフィングの形態である.このドーナツ状の渦輪構造による抗力低減は,高いレイノルズ数範囲においても渦構造を安定的に形成できるため,大きなプラズマジェットの流速,すなわちアクチュエータの大きな駆動エネルギーを必要としない点で有効と期待される. また3次元の数値シミュレーションにより,抗力低減が定常的ではなく,後流に放出されるはく離渦の形態に合わせて非定常に変動し,その平均値として減少することが示唆された.これは実験では観察の難しい,抗力変動と後流渦の関係を示す新しい知見である.
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今後の研究の推進方策 |
研究の最終年にあたる本年度は,フローモーフィングによる抗力低減技術の実用化を目指し,円板以外の物体について実験を行う.とくに自動車の空力抵抗について着目し,フロントグリル部やドアミラー部の抗力低減がフローモーフィングによりなされるかを検討する.風洞内に自動車模型やドアミラー模型を設置し,プラズマアクチュエータを作動させて抗力の測定を行う.その際の周囲流れの測定とメカニズムの検討も継続して行う. 実用上の流れでは,レイノルズ数が高くなることが予想されるので,これまでの実験で効果のあった,プラズマアクチュエータを高電圧かつ高周波数で駆動し,流速の大きいプラズマジェットを誘起することにより,安定して渦構造が形成できる高いレイノルズ数にも対応出来るフローモーフィング形態を探索する.あるいは本年度の成果のひとつである,渦輪が形成されるフローモーフィング形態も試すこととする. 得られた成果を総括して,フローモーフィング技術の有効性を示していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行の都合上,流速測定や圧力直接測定に必要な圧力校正システムを購入したため.来年度はプラズマ電極や実験装置の製作と,成果発表のための旅費等に使用する予定である.
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