研究課題/領域番号 |
17K06170
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
沖田 浩平 日本大学, 生産工学部, 准教授 (20401135)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | キャビテーション / 医用超音波 / 気泡力学 |
研究実績の概要 |
キャビテーションを援用した強力集束超音波による結石破砕や組織破砕を対象に,生体中のキャビテーションの力学的作用に関する知見を得ることを研究目的として今年度実施した内容は以下のとおりである. 昨年度までに開発された集束超音波キャビテーションのアプリケーションソフトウェアに対して,気液間のスリップがある場合の気泡の並進運動を取り扱うためのソフトウェアの高度化を実施し,気泡の並進運動と集束超音波によるキャビテーションの空間分布の関係についてBjerknes力等による影響を検討することが可能になった.また,結石破砕や組織破砕で使用される超音波は強度が強く,短時間でも焦点近傍の温度上昇が生じるため,温度上昇に伴う物性の変化の影響について検討するために,物理量の温度依存性を考慮した物理モデルの導入を行った.これらのソフトウェアの高度化によって,結石表面に生じる集束超音波の定在波音場において,気泡核から成長した気泡が,Bjerknes力によって定在波の腹に集まる傾向が本シミュレーションによって再現された.とくに,低周波数の超音波が生成する集束超音波音場では,気泡クラウド内において局所的に高ボイド率の領域が形成された.一方,高周波数の集束超音波で結石表面に生成されたクラウドキャビテーションを低周波数の集束超音波で崩壊する結石破砕法における超音波照射パラメータについて検討した結果,高周波数の超音波が結石表面で反射することで,追随する低周波数の超音波による結石表面から離れた位置での気泡クラウド生成が抑制されることや,高周波数の超音波に追随する低周波数の超音波波形を反転することによって,結石表面に形成される気泡クラウドの崩壊によって生じる最大圧力が改善されることなどが明らかになった.これらは,キャビテーションを援用した超音波治療法の安全性の向上と高効率化において重要な知見であるといえる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
集束超音波キャビテーションのマルチスケール・マルチフィジックス解析のためのアプリケーションソフトウェアの開発において,Bjerknes力による気泡の並進運動の影響や物性の温度依存性に関するソフトウェアの高度化を実施した.とりわけ,キャビテーションを援用した結石破砕の高効率な治療法につながる知見を得るため,さまざまな超音波照射パラメータおよび初期気泡条件についてシミュレーションを実施することによって,結石のような硬い弾性体表面での集束超音波キャビテーションの挙動について検討した.ここで得られた知見は非線形音響に関する国際会議やキャビテーションに関する国内会議において公表された.さらに,固体表面近傍での気泡クラウド崩壊によって生じる固体内部応力の評価に基づいて,組織破砕のモデリングについて検討を行った.以上のように研究計画に沿って,結石破砕における集束超音波キャビテーションの力学的作用について詳細な検討を行ったが,組織破砕対して検討するまでには至っていないため,研究の現在までの進捗状況についてはおおむね順調に進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
生体の軟組織表面での気泡の崩壊および軟組織内での気泡の膨張による組織破砕を対象に柔らかい弾性体への集束超音波キャビテーションの力学的作用について検討する.また, キャビテーションを応用したHIFU治療の確実な実現に向けて,音速不均一な生体中を伝播する集束超音波の焦点制御法に対する新たな手法について,アレイトランスデューサの各素子のOn/Offや位相の変化が音場に与える影響をシミュレーションし,位相パラメータの探索を最適化問題として自動的に行う方法について検討する.このとき,最適化で得られた解を時間反転法のシミュレーションによって得られるアレイトランスデューサの位相パラメータの解と比較することで,新たな手法の有効性について検討する.一方,前年度までに高度化した数値計算モデルによって,対応する実験を対象にしたシミュレーションを実施し,結果を検討することで本解析手法の有効性を検証する.また,新たに得られた知見を随時学会等で公表する.
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