研究課題/領域番号 |
17K06171
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
江上 泰広 愛知工業大学, 工学部, 教授 (80292283)
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研究分担者 |
松田 佑 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (20402513)
森 竜雄 愛知工業大学, 工学部, 教授 (40230073)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 感圧塗料 / 発光電気化学セル / 高輝度 / イオン液体 / LEC / PSP |
研究実績の概要 |
近年,感圧塗料(PSP)を用いて非定常圧力場を計測する方法の研究が盛んになされている.10kHz以上の非定常現象を高速度カメラで撮影する場合,1-100μsという非常に短いシャッタースピードで撮影する.このような高速度撮影では,現在のLEDなどを用いた光励起では,PSPからの発光強度が十分ではなく,取得された画像のSN比が非常に低くなってしまう.そのため非定常PSP計測では高い精度での計測は困難であった.そこで本研究は,光励起に代わって発光化学電気セル(LEC)の原理を利用してPSPを電気的に励起することで発光強度を100倍以上に高輝度化し,測定精度を10倍以上に飛躍的に向上させることを目的としている.LECは,有機ELと比べてホコリなどの混入による欠陥が生じにくく,スプレー塗布により作製可能であり,3次元形状の模型にも適応することができる.そのため,LEC-PSPを開発することで3次元形状に適応可能な高発光強度のPSPを実現できると考えた.本年度は,感圧色素にPtOEPを用いたLEC-PSPが発光する作製条件を確立するための調査を行った. 様々な発光材料を用いてサンプルを作成した結果,FLAT-ITO膜付きガラス基板にPSP/発光ポリマー/イオン液体を混合した溶液を塗布し,Alを真空蒸着することで安定的に発光するLEC-PSPを作製することができた.発光層の膜厚による影響,及び発光ポリマーに対する発光色素の割合による影響を調査したところ,発光層の膜厚は70-100 nmの範囲,発光ポリマーに対する発光色素の割合は5~15 wt%の範囲でLEC-PSPの高輝度の発光を得た.駆動電圧を変化させてLEC-PSPと従来の高速応答PSPで発光強度を比較したところ,高駆動電圧でLEC-PSPの方が約3800倍,低駆動電圧でも1000倍以上の高い発光強度を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は代表的な感圧色素の一つである白金ボルフィリンのPtOEPを用いて,発光化学電気セル(LEC)の発光を可能とする材料の組み合わせ,作成条件を見出す試験を行った.当初発光層のポリマーにPVKを使用していたが安定的な発光が得られなかったため,イオン液体と発光ポリマーの組み合わせに変更した.その結果高輝度のLECを作成することに成功した.またスピンコーターを用いて最適な膜厚を調査した.その結果発光層の膜厚を70-100nmの範囲にするとよいことが分かった.またイオン液体と発光ポリマーの組み合わせを用いることで,PVKのみで発光層を作成していたときよりも凹凸の少ない一様な膜厚が得られることもわかった.その結果高駆動電圧では目標の100倍を大きく超える約3800倍,低駆動電圧でも1000倍以上の高い発光強度を得る事ができ,目的達成に向けて大きく前進する事ができた. ただし,駆動電圧が想定の5-8Vよりも高い10-15Vとなっており,その原因を探る必要がある.また劣化を抑制し,数時間単位での安定的な発光強度を保持するためにはさらなる改良が必要である.また,LEC-PSPの圧力感度や温度依存性などの特性を詳細に評価するための特別な較正試験装置を設計,作成することができた.以上より,解決すべき新たな課題も見つかったものの,1年目の成果としてはおおむね順調に進んでいると言える.
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今後の研究の推進方策 |
作製したLEC-PSPの静的・動的特性の詳細な評価を行う.また,スピンコートによるサンプル作成で得た知見を元に,最適な膜厚を実現するためのスプレー塗装方法の条件を調査する.代表的な感圧色素の一つである白金ポルフィリン(PtOEP)でのLEC-PSPの発光に成功したので,もう一つの代表的な感圧色素であるルテニウム錯体(Ru(dpp)3)でもLEC-PSPを作成し,どちらがより高輝度かつ安定した発光が実現できるのか調査する.また,LEC-PSPを用いた高精度計測法についても調査を行う.LEC-PSPを駆動する電圧を矩形または正弦波とすることで容易にPSPの発光強度を変調する事ができる.計測対象の圧力変動波とわずかに変調周波数をずらして得られた「うなり成分」を利用するヘテロダイン計測法によってノイズ成分を大幅に低減した高精度測定法を確立する.また実際の流れ場にLEC-PSPを適用した実証試験を行う.角柱周りの流れ場で主流速度を変化させることで,得られる動圧を段階的に小さくすることで,計測可能な微小圧力変動について調査する.これらにより高輝度化による計測精度の向上に関する評価を行う.さらにこれらの実証試験を通じてLEC-PSPの問題点の抽出を行い,センサの作成にフィードバックすることでセンサ特性の改良に努める.
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次年度使用額が生じた理由 |
発光材料の使用量が想定よりも若干少なかったため,少額の次年度使用額が生じた. 来年度の使用計画としてはLEC-PSPの作成用の消耗品費として,発光色素,発光材料,試薬に450千円,薬品調合用のガラス機器や手袋などの保護具に150千円,光学部品に90千円を計上している.また結果発表の旅費に合計310千円,研究成果投稿料に100千円を計上した.
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