2019年度は、リンと窒素原子を共置換した酸化チタン系触媒の合成と高性能化に注力した。簡易燃焼法を利用し、リン源、合成温度、合成時間等を性能に対して最適化した。X線回折法、ラマン分光法、エネルギー分散型X線分光法、X線光電子分光法、Brunauer-Emmett-Teller法と電気化学的評価方法を利用し、以下の知見を得た。 ・リン源としてホスフィン酸を利用することにより、リン酸他を利用した場合に比べてバルクのTiN相と表面のルチル型TiO2相双方に、5価のリン原子を多数置換導入することができた。ホスフィン酸は他のリン源に比べ一分子当たりの酸素原子数が少なく、触媒合成時に酸化して異元素が脱離する反応を抑えられたと考えられる。 ・表層に置換導入したリン原子の数と性能が良い相関を示し、5価のリン由来の反応サイトが形成されたことが示唆された。 ・合成時に副生成物である四塩化アンモニウムがテンプレートとなって細孔を形成し、当初計画していたシリカテンプレートを利用する場合と遜色ない400 m2/gを超える比表面積が得られた。 ・合成した触媒をアンモニア雰囲気で低温にてアニールすることにより、凝集させることなくTiO2相における酸素サイトへの窒素原子の置換導入量を増加させ、反応機構を制御できることを見出した。酸素分子から過酸化水素を生成する二電子反応(O2 + 2H+ + 2e- → H2O2)が進行すると、過酸化水素やそのラジカルが電解質成分を分解し、性能低下要因となることが知られている。アンモニア雰囲気での低温アニールにより、過酸化水素の生成率が半値以下に減少し、酸素分子が直接水になる四電子反応(O2 + 4H+ + 4e- → H2O)に対する選択性が向上した。
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