研究課題/領域番号 |
17K06182
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小原 拓 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (40211833)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 固液界面 / 熱輸送 / 界面熱抵抗 / 分子動力学 / 固液複合系ナノ材料 |
研究実績の概要 |
本研究は、厚さ10~100nmの固体層・液体層が多数重なった構造により、いわば固液界面のみから成るマクロ媒体を構成して、固液界面において生じている特異な(バルク液体・固体とは異なる)熱輸送特性を積極的に利用した新しい熱媒体を創成するための学理を確立する基礎研究である。固液界面の熱輸送における非平衡性や熱抵抗などの現象を理解し、それらが重畳してマクロなスケールとなったときに熱媒体として示す総括的特性を解明すると共に、この特性の自在な制御を目的として、固液界面のナノスケール非平衡熱輸送特性を制御するための方策を探る。大規模な分子動力学シミュレーションによる重畳界面の特性解明と制御法の探索により、これまでにない特性を自在・柔軟に実現できる熱媒体材料「ナノ固液界面複合系」に直結する成果をあげることが本研究の目的である。 固液界面では、固体-固体接合界面とは異なり表面の凹凸による接触実面積の減少がないにもかかわらず、界面熱抵抗が存在することは以前から知られている。これに対して小原らが開発した分子動力学シミュレーションによる界面熱エネルギー輸送特性の解析法により、熱エネルギーの伝搬モード(熱エネルギー伝搬に寄与する分子運動の自由度)や界面近傍の液体中に形成される構造の影響などを知ることができるため、様々な系に対してこれを適用して研究を進める。 平成30年度は、固液界面および近傍領域における熱輸送特性に対して、固体壁面間の距離が小さく2つの固体壁面の影響が干渉する場合について、前年度に構築した計算系を用いて解析を行った。一定の面圧下で固体壁面間の液体分子数が変化した場合、固体表面の影響を受けて形成される液体分子層の数に対応して固体壁面間距離が離散的に変化すること、液体層が1層のみの場合は2層以上の場合に比べて著しく小さな固液界面熱抵抗が発現することなどが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度に構築した計算系を用いて、固体表面に液体分子が吸着して形成される層状構造の層数など、固液界面熱抵抗に影響を与える因子やその効果を明らかにすることができ、学会における口頭発表の他、英文主要誌に論文を投稿して現在審査中である。また、界面活性剤の効果など他の研究からの情報収集と議論を進め、現象のメカニズムが次第に明らかになってきた。今後は界面活性剤の効果など検討対象を拡大しながら研究成果をまとめてゆくが、その準備が整いつつある。以上から、研究はおおむね順調に進展しているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度には計算系の構築と解析法の検討など技術的課題の解決に長大な時間を必要としたが、妥当な計算系を確立することができ、2018年度には界面系の大規模分子動力学シミュレーションを展開することができた。影響因子に関する考察や他のグループの解析結果など情報収集も進んでおり、2019年度には数値解析を継続しつつ、まとめとして影響因子とその影響など、本現象を利用したナノ複合系材料への展開につながる成果を上げたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進展に従っておおむね順調に経費の消費を進めたが、多少の次年度使用額が生じた。次年度には解析作業量が増加し、また成果発表や情報収集も活発に行う予定のため、2018年度からの繰り越しも含めて使用することが必要となる見込みである。
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