研究課題/領域番号 |
17K06185
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
金野 満 茨城大学, 工学部, 教授 (90205576)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 新燃料 / ジメチルエーテル / 改質 / 排熱回収 / 水素 / 排気温度 / 空気過剰率 |
研究実績の概要 |
本研究は、DMEの理論空気量の低さ、PM生成傾向の低さ、改質平衡温度の低さといった特色を最大限に活かし、排気熱を利用したDME の吸熱改質反応を用いて、排気エネルギーの回収、改質成分による着火制御および希薄化により、石油系燃料では達成できない高効率・クリーン内燃機関を実現することを目的とする。 初年度の2017年度は、研究実施計画に沿って、詳細素反応モデルを用いて熱平衡を仮定した反応解析を行い、DMEの基本的な改質特性を把握することを試みた。過給機関を想定した圧力140kPaの下、CHEMKIN-PROを用いて排気温度600K~800K、空気過剰率1~1.4の希薄域における組成を求め、条件ごとにエネルギー回収率を算出した。従来燃料との比較のため、DMEの他にガソリンの着火特性を5種類の成分で代表させたSIP仕様のガソリンサロゲート燃料(S5R)についても同様の解析を行った。 その結果、600KではDMEを用いた場合のエネルギー回収率は1.0を超えることがなかったが、700K以上で空気過剰率1.0のときにエネルギー回収率が1.0を超える条件が存在し、排気温度800K、S/C(排気に含まれるH2Oのモル数と改質燃料の炭素数の比)5.0以上では1.10を超えることが示された。ガソリンとの比較では、エネルギー回収率はやや低いものの、同一S/Cでは水素生成量が20~40%多いことが示され、水素添加によるDME噴霧の過早着火抑制が期待できる結果となった。一方、酸素が共存すると改質反応は大幅に抑制されることが示され、空気過剰率が1.0を超える希薄域では十分な改質は望めないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、詳細素反応モデルを用いた反応解析によりDMEおよびガソリンサロゲート燃料の改質特性を把握することができた。ガソリンに比べて水素発生量が多いことが明らかとなり、DMEの改質は燃焼特性の改善に有効なことが示された。一方、事前の文献調査から、改質温度が低いこと、および希薄域でも改質反応が進むことを予想していたが、改質温度はガソリンの場合と変わらず、希薄域での改質は難しいことが判明した。また、次年度以降の実機エンジンと模擬ガスを用いた改質による燃焼特性把握実験の準備もおおむね順調に進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の反応解析により、改質反応は予想に反して空気過剰率に敏感なことが判明し、改質触媒システムを構築する上で、DMEと排気の混合が重要なことが示唆された。このことは、混合むらにより希薄な領域が存在すると改質反応が低下することを意味しており、触媒システムへのDME噴射特性の把握が重要な課題として浮上した。このことに対応するため、次年度は一部計画を変更し、DMEの噴射特性の把握を課題として取り上げたい。高温の排気中にDMEを噴射することを考えると、蒸気圧の高いDMEはガソリン等の石油系燃料に比べて噴射ノズル内部でキャビテーションを起こすことが予想される。噴射ノズル内部でキャビテーションが生じると噴霧特性が大幅に変わることが知られていることから、先ずは数値解析によりノズル内挙動の把握を試みるとともに、検証のための可視化実験を実施することを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度計画欄で述べたように、今年度の反応解析により、改質反応は予想に反して空気過剰率に敏感なことが判明し、改質触媒システムを構築する上でDMEと排気の混合が重要なことが示された。このことを受け、次年度は一部計画を変更し、DMEの噴射特性の把握を課題として取り上げ、噴射ノズル内部流動の可視化実験を実施することとした。この実験を進めるには、可視化ノズルの製作、可視化実験系の構築が必要なため、今年度予定としていた改質評価システム構築にかかる費用のうち、模擬ガス供給配管ならびに流量制御の改造費用を次年度に繰り越して可視化実験費用に充てることとしたため。
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