研究課題/領域番号 |
17K06186
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
志賀 聖一 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (00154188)
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研究分担者 |
GONZALEZ・P JUAN 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (30720362)
荒木 幹也 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (70344926)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 静電気 / 微粒化 / マルチノズル / 粒径 / 流量 / 電界強度 |
研究実績の概要 |
平成29年度においては,静電微粒化の特性付けを行い,電圧―流量―粒径の3パラメータ平面上で静電微粒化のトレードオフを表すことを試みた.そして,ある電圧で微粒化モードが変化することや,ザウタ平均粒径(SMD)と流量の間の関係式を求めることができた.さらに,最小流量ではあるが,SMD=11 μmを達成できた.これらはすべて7本ノズルにおいてであった.平成30年度においては,マルチ化に注力し,16本までのノズルを使用して実験を行った.その結果,以下が明らかとなった. 1.環状マルチノズルは中心部ノズルからの粗大な液滴が生成されないのでSMDは小さくなることが多い.しかし,外縁部ノズルが1本多い環状マルチノズルは電界強度の点で不利であり,粗大な液滴を生成するモードに変化し,SMDが増加する場合がある. 2.スピンドルモード域においてノズル本数増加によりSMDを小さくするには,ノズル1本当たりの流量の減少とノズル同士の干渉による電界強度の低下のバランスが重要である. 3.プリセッションモード及びコーンジェットモード域では,ノズル1本当たりの流量減少kによるSMDへの影響はほぼ見られず,印加電圧10 kV,流量約3.1 ml/minの条件では6本以上のノズル本数増加は電界強度低下の悪影響が大きく表れた.6本ノズルにおいては,10 kVにおいて,0.4 ml/minでSMD=9 μm,3.1 ml/minにおいても,22 μmと絶対値は前年度を下回ることができた. 4. 静電微粒化を支配している重要な要因が電界強度であることから,電界強度を評価できるシミュレーションソフトを導入し,最適なノズル配置を検討することとした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ノズルのマルチ化によって,飛躍的な微粒化性能,すなわち粒径と流量の関係改善を期待したが,SMDの絶対値はわずかに下回ることはできたものの,ノズル本数は6本が最適であるなど,マルチ化のメリットを実現することはできなかった.そのおもな理由は,マルチ化に伴う流量低下は,基準に対して1/16にも達し,液糸の直径は桁違いに小さいことが期待されたのにもかかわらず,そのことが同時に電界強度の低下をもたらしてしまったことにある.すなわち,流量と電界強度のトレードオフ関係に陥ってしまったことが示された.このことは,平成29年度においてもすでに示唆されており,ノズル突出し部にステップを設けることが有効であることも示された.しかしながら,SMDの絶対値が大きく,これまでの成果を超えることはできなかった.このように,2年間を通してみても,達成度は低いと言わざるを得ない.平成29年度の試行錯誤的との反省はかろうじてシミュレーションソフトの導入に生きているが,その実用性を検証することで,電界強度予測の研究成果に対する効果が現れるに至らなかった.
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今後の研究の推進方策 |
本来は,平成30年度において,第三の電極による噴霧制御の実験に進んでいなければならないが,そのことと並行して,令和1年度においては,電界強度のシミュレーションソフト(HiPhi)によるノズル配置の最適化をまず行う.すなわち,第二電極(ノズルは接地電極に固定)の形状を,これまでのメッシュ状とリング状に加えて,それらの配置の影響,そして第三の電極の影響を明らかにしてゆく.このことによって,本研究の大きな独自性である,静電気による噴霧の生成段階である微粒化過程への効果とともに,生成した噴霧の運動やひろがりの制御という目的が達成されると期待される.この段階においても,電界強度のシミュレーションソフトは実験の指針を与えるものであり,実験の効率化をはかるための有力なツールであると考えられる.そして,それに基づいた実験を行うことによって,従来の電界強度に関する考察の妥当性を検証し,そして,新たなノズル数,ノズル配置,第二電極形状と配置,そして第三電極の形状と配置といった重要な要因と,微粒化と噴霧挙動との関係から,ソフトウェアによる予測の有効性が検証され,静電微粒化における電界強度予測の重要性が明らかになると期待される.そして,これらとともに,最終目標である実機関実験の準備を行い,始動時のHC低減効果の検証と,吸気温度低下とそれに伴う体積効率増大の程度を明らかにする.
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