研究課題/領域番号 |
17K06187
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
千足 昇平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (50434022)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | カーボンナノチューブ / レイリー散乱分光 / その場計測 |
研究実績の概要 |
単層カーボンナノチューブ(単層CNT)の分光計測をより高効率,広い範囲に対し行うことを可能にするために,測定系の自動制御化を進めた.具体的には,サンプルを置く電動ステージのX-Y平面内における位置決め,分光器によるスペクトル測定,サンプルへの励起レーザー光のオン/オフや,レーザー強度,波長等をパソコンにより制御した.また,それらを全て同期させ制御することにより,自動でサンプル内の単層CNTを広範囲に渡りサーチすること,励起光波長を変化させながら単層CNTの光学遷移エネルギーを自動で検出することなど,これまでは作業プロセスが煩雑で非常に時間がかかる計測であったものが容易に行えるようになった.従来は限られた数の単層CNTの分析しか行えず,特定の(例えば発光強度が強く見つけやすい)単層CNTについての考察しか行えてこなかったが,この自動化により多数の単層CNTに対する統計的な情報を得ることができるようになった. より詳細な分析が可能になったことを踏まえ,測定スペクトルや励起レーザーの波長の校正も,厳密に行った.参照光スペクトルとしてアルゴンガスや水銀ガスからの発光ピークを用い,これらの発光スペクトルと,単層CNTから測定したスペクトルとを比較・校正を行うことで波長1nm以下での精度でスペクトルを取得することが可能になった. 今後,架橋単層CNTや様々な基板上の単層CNT,さらに表面にコーティングや化学修飾した単層CNTなど,複雑な環境下における単層CNTに対する測定を進め,周囲環境における単層CNTの物性変調のメカニズムの解明ができる状況になったと考える.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
レイリー散乱分光計測系の確立を進めるとともに,その途中段階での蛍光発光スペクトル計測において,様々な形態の単層CNTからのPLスペクトルの取得に成功した.PL計測はレイリー散乱計測に対し,相補的な役割を担うことができるだけでなく,単層CNTの詳細な分析を可能にすることから,より多くの情報を得ることができるようになったといえる.
|
今後の研究の推進方策 |
レイリー散乱イメージング計測系の拡充を進めるとともに,これまでに開発してきたPL分光系をさらに発展させPLイメージング計測の実現を目指していく.一方で,単層CNTのサンプル作製技術開発も行っていく.例えば,架橋単層CNTだけでなく,特殊な基板上に単層CNTを直接合成し,そこからのレイリースペクトルやPLスペクトルの取得を目指し,基板が単層CNTに与える影響を明らかにしていく.
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新たな計測系構築のため,既存の実験装置や光学系の調節作業,およびその自動制御化を進めた.当初,様々な制御装置等が別途必要になると考えていたが,現状の測定系において予想以上に順調に計測システムの自動化が実現したことから,それを踏まえ次年度において,蛍光発光スペクトル計測系およびレイリー散乱スペクトル計測系の統合,自動化そして,様々な単層CNTサンプルの作製実験を計画を早めて遂行していく予定である.
|