研究課題/領域番号 |
17K06188
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
村田 章 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60239522)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | フィルム冷却 / 脈動流 / 伝熱促進 / ガスタービン翼 / ディンプル / 非定常法 / 流れの可視化 / LES |
研究実績の概要 |
フィルム冷却はガスタービン翼表面への空気膜形成により高温ガスからの熱遮蔽をする高熱効率化に必須の技術である.特に翼後縁部は,両面からの熱負荷が非常に高いが薄さのために内部冷却が困難で,片側壁を除去したカットバック形状を採用している.そこでのフィルム冷却では,熱遮蔽性能を維持しつつカットバック面の伝熱促進が要求される.これは従来と異なる制約条件下での新たな伝熱促進問題である.本研究では冷却流の脈動化を利用して性能向上を図る.伝熱計測,PTV計測,LES・DNS解析を行うことで,最適脈動パラメータ,最適ディンプル面形状を決定し,この新たな伝熱促進問題の最適解を求める. 伝熱実験での作動流体は空気であり,固体内3次元熱伝導を考慮した非定常法によって,フィルム冷却効率と熱伝達率の同時計測を行う.主流レイノルズ数25,000,ブロー比0.5~1.5とする.脈動冷却流はスピーカーで形成する.2年度目はブロー比0.75, 1.0での平滑カットバック面の計測を行った.脈動周波数は各ブロー比における定常冷却流での渦発生周波数で規格化したストローハル数比を0.45~1.2と変化させた. PTV計測実験での作動流体は水であり,直径50μmの樹脂粒子で流れを可視化し,高速度ビデオカメラ2台で撮影する.YLFレーザからシート光を照射し,連続時刻間での粒子位置追跡から速度場を算出する.脈動冷却流はゴム管をレシプロモータで変形させて形成した.伝熱実験にパラメータを合わせて速度3成分計測を行った. LES・DNS解析での流路形状は実験と同一であり,非構造格子での有限体積法を用いる.2年度目は実験に先行して平滑カットバック面での脈動冷却流のストローハル数比を無理数√2とした場合を含めて,ストローハル数比と流速片振幅を変化させた計算を行い,ストローハル数比√2で最も性能向上することを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
伝熱実験では脈動発生用スピーカー位置を冷却流路側に移動することで流速片振幅2~5%(前年度は1%以下)を実現できるようになり,ブロー比0.75,ストローハル数比0.9で熱遮蔽冷却総合性能指標(正味熱流束低減率:NHFR)が最大7.5%向上することを確認した.一方,PTV計測実験ではストローハル数比と流速片振幅を変化させての計測と位相平均処理を実施し,時間平均壁面垂直速度(壁面に向かう速度)の低下を指標としてストローハル数比1.33で大規模放出渦が最も抑制されることを示した.さらに,LES・DNS解析では実験に先行して平滑カットバック面での脈動冷却流のストローハル数比を無理数√2とした場合を含めて,ストローハル数比と流速片振幅を変化させた計算を行い,ストローハル数比√2で最も性能向上し,流速片振幅10%の場合にはNHFRにおいて4%の性能向上が確認された.
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今後の研究の推進方策 |
2年度目(2018年度)には,伝熱実験での冷却流脈動流速片振幅を高めるための装置改修,LES・DNS解析では主流・冷却流入口条件の検証と定常冷却流での大規模放出渦の周波数特定,にそれぞれ時間がかかり,ディンプル面での実験・計算に遅れが生じた.現時点ではこれらの問題は解決しており,また,ディンプル面コアも一部を除き製作済みであるので,今後,平滑カットバック面での脈動冷却流の結果と比較しながら,ディンプル面を対象とした伝熱実験,PTV計測,LES解析を早急に実施していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
以下の2点が理由である.伝熱実験での脈動冷却流流速片振幅を高めるための装置改修に時間がかかり,ディンプル面製作の一部が次年度に繰り越しになり,実験材料等消耗品の購入が少なかったこと.東京大学情報基盤センタースーパーコンピューティング部門の若手利用に学生が採択され,計算機利用料が想定よりも低かったこと.
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