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2018 年度 実施状況報告書

高周波超音波振動と交番磁場を併用した過冷却の促進による食品の高品質冷凍技術の開発

研究課題

研究課題/領域番号 17K06192
研究機関金沢大学

研究代表者

多田 幸生  金沢大学, 機械工学系, 教授 (20179708)

研究分担者 大西 元  金沢大学, 機械工学系, 助教 (80334762)
春木 将司  金沢大学, 機械工学系, 准教授 (90432682)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード食品凍結 / 超音波振動 / 過冷却 / 核生成
研究実績の概要

コールドチェーンの発達に伴って食品を安全かつ美味しく凍結保存する技術の確立が求められている.凍結保存は原理的には,低温化と活性水分の低減により生化学反応の抑制を図るものであるが,凍結の過程で細胞レベルのミクロ現象が生じ,これが各種の凍結損傷に繋がる.したがって,食品の品質を劣化させない効果的な凍結技術の開発が課題となる.本研究では,高周波超音波振動ならびに交番磁場を利用した凍結過程における氷晶形成の能動的制御の追究する.すなわち,高周波超音波振動の付与によるミクロな振動および交番磁場による静電気的作用を利用して,細胞内外の水の過冷却の促進を図り,それによる高品質な凍結を実現する冷却技術の開発を目標とする.
前年度の結果において,交番磁場については過冷却に及ぼす明確な効果は得られなかったことから,今年度は高周波超音波振動の付与に伴う発熱作用を利用した組織体の凍結・解凍制御に重点をおいて研究を推進した.前年度と同様に模擬食品としての寒天ゲルを対象に超音波照射下での一方向凍結・解凍実験を行った.その結果,高周波超音波の吸収に伴う発熱作用を利用した組織体内の温度制御により,組織体全域を過冷却状態に移行させ,それを解除することでから急速凍結できることが可能となった.また,高周波超音波は水を透過し,氷に優先的に吸収される性質に着目し,内部発熱効果を利用した均質・急速解凍法としての有効性が実験的に見出された.以上により高周波超音波振動を利用した食品の高品質凍結・解凍技術としての可能性が実験的に見出された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初計画した (1) 高周波超音波振動を付与した組織体の凍結実験,(2) 高周波超音波振動を付与した組織体の解凍実験は予定どおり実施された.(1)の実験では,前年度製作した氷晶径の観察装置を用いて,過冷却状態から凍結した試料内に形成される氷晶径を測定し,本手法により凍結過程で生成される氷結晶を微細化できることが実験的に確認された.また,(2)の実験では,高周波超音波を照射しながら解凍することで,試料内部の解凍速度の向上を図り,それにより解凍過程で生ずる氷結晶の粗大化による損傷を軽減する方法について実験的に検討した.その結果,従来の気流解凍および流水解凍と比較して,試料内温度が5℃を超えないように維持しながら,試料全域を急速解凍できることが見出された.高品質な食品凍結技術を確立する上で,凍結損傷と解凍損傷の両方を抑制する必要があり,高周波超音波を利用することで急速凍結と急速解凍が実現できた点は本年度の成果であると考えている.次年度は,当初予定していた時間領域差分法(FDTD法)を用いた超音波照射下での試料の冷却過程の数値計算モデルの構築を進め,操作条件の最適化を進める予定である.以上のことから,本研究はおおむね予定どおりに進行していると考えられる.

今後の研究の推進方策

令和元年度は前年度の実験結果をもとに,高周波超音波振動の付与に伴う発熱作用を利用した組織体の凍結・解凍制御の解析モデルの構築に重点をおいて研究を推進する.具体的には,(1)時間領域差分法(FDTD法)を用いた超音波照射下での試料の冷却・昇温過程の数値計算モデルを構築し,実験結果と計算結果の比較検討を行い,モデルの妥当性を検証する.(2)数値計算モデルを用いて,過冷却状態から急速凍結する領域の長さと操作条件の関係,最大過冷却度と操作条件の関係を導出する.(3)その結果をもとに,試料全域に最も微細な氷結晶を形成する超音波照射条件を導出する.(4)解凍過程では,試料表面を品質維持で必要な5℃以下に維持しながら組織全域を急速解凍するための超音波の照射方式を解析的に求める.(5)以上の結果をもとに,魚肉および豆腐を供試した食品の凍結・解凍実験を行って解凍後の品質変化を調べ,高周波超音波振動を利用した凍結・解凍法の有効性を実験的に検証する.

次年度使用額が生じた理由

平成30年度経費のうち,96,815円の繰り越しが生じたのは,模擬食品の凍結・解凍挙動の数値計算を行う予定であったが,プログラムの作成が遅れたため,そのために購入を予定していたコンピュータの購入を見合わせた.このため,96,815円を次年度に繰り越し,次年度に数値計算用のコンピュータを購入する計画である.これにより,凍結・解凍の挙動を解析に求めることができ,操作条件の最適化が可能になると考えられる.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Active Control of Freezing of Biological Tissue by Utilizing High-frequency Ultrasonic Vibration2018

    • 著者名/発表者名
      Y.Tada, K.Nishikawa, H.Onishi and M.Haruki
    • 雑誌名

      Proceedings of The 29th International Symposium on Transport Phenomena

      巻: - ページ: ISTP29-191

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 高周波超音波振動を利用した凍結組織体の解凍2018

    • 著者名/発表者名
      靑木和也,多田幸生,大西元,春木将司
    • 雑誌名

      日本機械学会熱工学コンファレンス2018講演論文集

      巻: - ページ: E112

    • DOI

      https://doi.org/10.1299/jsmeted.2018.0152

  • [学会発表] Active Control of Freezing of Biological Tissue by Utilizing High-frequency Ultrasonic Vibration2018

    • 著者名/発表者名
      Y.Tada, K.Nishikawa, H.Onishi and M.Haruki
    • 学会等名
      The 29th International Symposium on Transport Phenomena
    • 国際学会
  • [学会発表] 高周波超音波振動を利用した凍結組織体の解凍2018

    • 著者名/発表者名
      靑木和也,多田幸生,大西元,春木将司
    • 学会等名
      日本機械学会熱工学コンファレンス2018
  • [学会発表] 靑木和也,多田幸生,大西元,春木将司2018

    • 著者名/発表者名
      高周波超音波を利用した食品の高品質解凍技術の開発
    • 学会等名
      日本伝熱学会北陸信越支部春季セミナー

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公開日: 2019-12-27  

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