1.スプレー沸騰冷却時の局所的濡れ開始条件の可視化・温度計測に関して、大サイズ伝熱面による可視化と高温面初期温度400℃を実現する装置は、昨年度までの技術的課題を一部解決し、最終的に初期温度220℃での実験が可能となった。すなわち、透明な大サイズサファイア円板(φ180mmx5tmm)上にHFE-7100および水をスプレーする際に、固液接触状況を板の下部および上部から高速度カメラにより観察する。表面温度計測のためにサファイア板にφ1mmシース熱電対を埋め込むと熱応力発生のため高確率で板が破損するため、表面温度のリアルタイム計測は中止し、代わりにスプレー開始時初期温度計測のための熱電対素線を板上に貼り付けた。水スプレー実験については、シース熱電対が無い状況でも冷却時の熱応力で破損するケースが生じたため、流量密度を0.083L/(m2・s)と小さく抑えて常温の水をスプレーした。その結果、板初期温度220℃の場合は、高速度ビデオ記録時間の4s内では固液接触は観察されず、板初期温度180℃の場合は、スプレー開始直後から直径1mm未満の多数の固液接触点が観察された。このように、水スプレー沸騰時のMHF点近傍(膜沸騰から遷移沸騰領域)での固液接触状況の直接観察に初めて成功した。(ただし、初期温度180℃の実験後、サファイア板が破損し、その他の条件での実験が実施できなかった) 2.前述の通り、スプレー沸騰時の可視化とサファイア表面温度の同時計測が困難となったため、計測された表面温度を元にした伝熱逆問題解析ではなく、高温固体面に水滴が連続的に接触する際の固液界面近傍の伝熱解析モデルを構築した。すなわち、固体側および液相側を分割し、固液接触直後以降のそれぞれの非定常熱伝導と液相内の自発核生成プロセスを連成させた。実験結果による検証を経て、今後濡れ開始条件を検討する。
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