研究課題/領域番号 |
17K06197
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
瀬尾 健彦 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (00432526)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 熱工学 / 燃焼 / プラズマ利用 |
研究実績の概要 |
噴霧液滴を利用したレーザー光による点火手法では燃料濃度の濃い液滴周りで点火の契機となるプラズマが生成されるために,筒内の空気比が高い場合でも確実に点火ができると考えられる.しかし,プラズマから火炎核生成に至るプロセスは明らかになっていない.そこで本研究では,燃料噴霧を対象としμs オーダーの高速な現象である火炎核生成に対して高度光学計測と数値解析を適用し,噴霧液滴近傍における火炎核形成メカニズムを明らかにすることで,噴霧中におけるレーザー点火機構の解明を行うことを目的としている.これまでは,液滴周りの燃料蒸気濃度がプラズマの生成によって形成される高温領域および初期火炎核の形成に及ぼす影響を理解するために,加熱による蒸発量を変更した燃料噴霧流へのレーザー着火を行い,着火および着火失敗に至る過程を調査した.その結果,蒸発量によって形成される高温領域および初期火炎核の形状が異なることがわかった.しかし,場の温度条件や粒径分布なども同時に変化する.本研究の特徴は,噴霧液滴を用いた点火であることから,場の温度条件による着火特性への影響は避けるべき現象である. そこで2019年では,生成されるプラズマの極近傍領域を超高速度で撮影することにより,着火につながる液滴の振る舞いと噴霧特性を調査した.その結果,小さな液滴だけで構成されている噴霧ではなく,少し大きめの直径の液滴が存在している噴霧場の方が着火しやすいという傾向が見られた.また,大きな液滴は高温領域の膨張により,高温領域内で微粒化されることもわかった.小さな液滴は膨張の流れに乗り高温領域の周囲に押し出されることが観測できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
燃料蒸気濃度を変えた実験を計画していたが,場の温度条件や粒径分布なども同時に変化することが明確になった.本研究の特徴は,噴霧液滴を用いた点火であることから,場の温度条件による着火特性への影響は避けるべき現象である.そこで,場の状態が定常てある常温常圧条件での実験へと切り替えた.その結果,高温領域は基本的に膨張によって広がり,その内部へは小さな液滴は取り込まれにくいと考えていたが,比較的大きな液滴は微粒化を伴いながら内部に取り込まれることが分かった.着火する場合,この内部に取り込まれる液滴が多くみられる傾向にあることから,何かしらの影響を及ぼしていると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度が最終年度であることから,実験方法は大きく変更はしない.引き続き高速度撮影を駆使し,着火に適した噴霧場と高温領域に取り込まれる液滴の着火への影響を定量的に評価していく.そして,それらの結果を学術雑誌に投稿する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度での成果において,噴霧中での着火メカニズム解明への糸口が見えたこと,また2019年度での成果の公表を行いたいために2020年度までの延長を行った.
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