研究課題/領域番号 |
17K06203
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
山根 浩二 滋賀県立大学, 工学部, 教授 (10210501)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バイオディーゼル / メタセシス反応 / 蒸留特性 / マイクロ波反応器 |
研究実績の概要 |
本研究では,通称バイオディーゼルと呼ばれる脂肪酸メチルエステル(FAME)の低分子化反応の反応条件が生成物の蒸留特性に与える影響を明らかにし,反応条件によってFAMEの蒸留特性を操作することである.これまで改質FAMEの性能は検討されてきたが,反応時の条件を検討し,その影響について明らかにした例はない.蒸留特性を操作することでエンジントラブルの少ない改質FAMEの実現が可能となり,また,効率的改質FAMEの製造はコスト低減にもつながると考える.そこで,マイクロ波反応装置を用いて,低分子化反応時の主要反応条件である触媒濃度,反応温度,撹拌速度を変更して蒸留特性に与える影響を実験的に調査した. その結果,沸点300℃以上の高沸点成分の留出量がメタセシス反応前の半分近くまで減少し,225℃以下の低沸点成分の留出量が増加する特性は,触媒濃度を変更しても変わらないこと,また,原料となるFAMEの脂肪酸組成の割合が変化してもこの蒸留特性はほとんど変わらないこと,廃食油由来のFAME(WME)の場合,低触媒濃度において,ほとんど低分子化反応が進まず,高沸点成分の多くは残留することなどが確認された.一方,低沸点成分に比べて高沸点成分に対する反応温度の影響が顕著となり,反応温度50℃において最も低分子化反応が進むことや,撹拌速度が遅いほど低分子化反応が進行することなどが明らかになった. 以上の結果から,改質FAMEを軽油の代替燃料として利用する場合,本研究の実験範囲では,触媒濃度0.12mol-%,反応温度50℃,撹拌速度100rpmが反応条件として最適であることが明らかとなった.この条件は潤滑油希釈抑制効果が高いだけでなく,従来の触媒量の半分以下の値となり,FAME改質における製造コスト削減の点でも大いに期待できると考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂肪酸組成と反応条件(触媒濃度,反応温度,撹拌速度反応温度)との関係を見出し,蒸留特性をコントロールするための指針を得ることができた.なお,廃食油メチルエステル(WME)に対しては,反応前処理としてWMEを加温してから反応させた場合は他のFAMEと同じ反応性を示すが,加温せずに反応させた場合には,必要触媒濃度が高くなるなど,本研究の当初の計画以上のことが発見された.WME中の残留水分と残留メタノールがその原因物質と仮定した実験を行ったが,その影響はまったく無かったことから,今後の調査課題として新たにあげることにした.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,クロスメタセシス反応の反応物質であるオレフィンの影響を調査する.これまでは,FAMEと1ーヘキセンを反応させた場合に対する反応条件の影響を明らかにしてきたが,オレフィンである1-ヘキセンの他に,エチレンなどの他のオレフィンの反応性を明らかにする.また,反応前処理の有無によって廃食油メチルエステル(WME)の反応性が異なる原因に関しても調査を続ける.
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次年度使用額が生じた理由 |
メタセシス触媒などの実験に使用する化学反応高額消耗品購入に充てるには,残金が少額であるため,あえて次年度助成金と合算して使用することとした.
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