研究実績の概要 |
本研究の目的は、沸騰冷却分野の面より、次世代鉄鋼材料創製技術を構築するものである。すなわち、昨今広く利用できるようになったMEMS技術、赤外線サーモ グラフィおよび高速度ビデオカメラを利用して、工業上頻繁に遭遇する高液サブクール度条件(液温約30℃以上)での、高温壁面上の濡れ開始瞬間の温度条件と 局所濡れ域の熱流束(熱伝達率)の定量化と相関式化である。加えて、高液サブクール度条件での高い壁面温度条件での膜沸騰崩壊の物理的妥当性を有するモデ ルと同条件下の遷移沸騰熱伝達のモデルの構築も行う。 第3年度の平成31年度は、サファイア伝熱面に加え、熱伝導率が異なる透明石英ガラスを加熱面に利用し、濡れ開始条件に注目した。具体的には、サファイア伝熱面(k=20W/mK)同様に、600℃に加熱した熱伝導率が異なる透明石英ガラス(1.5W/mK)を直径3mmのノズルの水ノズルで冷却し、この時の冷却時の様相を、赤外線サーモグラフィ(温度計)および高速度ビデオカメラにて計測し、濡れ開始条件を直接定量化した。冷却方法は、液ノズルによるラミナー冷却であり、実験条件は、液サブクール度0~75Kである。 この結果、石英ガラスの濡れ開始温度温度は、液サブクール度よらずが約600℃であることが確認できた。これは、熱力学的過熱限界温度より高く、サファイア加熱面の液サブクール度30,50K条件での濡れ開始温度と類似している。これもサファイア加熱面(k=20W/mK)同様、石英ガラス加熱面の熱伝導率の低さ(1.5W/mK)と冷却速度の大きさより表面温度と裏面温度に差異があったと考えられる。今後、固体熱伝導率に基づく高い壁面温度条件での膜沸騰崩壊の物理モデル化を検討し、物理的妥当性をさらに検討する。
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