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2019 年度 実施状況報告書

単一個体の活動性を調べるナノワットバイオカロリメータの開発

研究課題

研究課題/領域番号 17K06211
研究機関明治大学

研究代表者

中別府 修  明治大学, 理工学部, 専任教授 (50227873)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワードバイオカロリメトリ / サーモパイル / 恒温槽 / 熱測定 / MEMS
研究実績の概要

本研究では,生物の細胞や微生物の卵,植物種子などの生体試料単体の発熱挙動が計測できるバイオカロリメータの開発を目的としている。これまで,多重恒温槽内に設置したガラス基板上に形成した薄膜サーモパイルセンサにより,バイオ試料の微量な発熱を捉える能力の向上を実施しており,100nWレベルの発熱を捉えることに成功している。
今年度は,試料底部に配置したサーモパイルでは試料発熱の約20%程度が上方へ逃げ,その割合が試料セルの形状や設置部の熱コンダクタンスで変わるため,正確な熱量計測へ問題があることが分かった。対策として,下面と上面にサーモパイルセンサを配置した新型の熱量計を考案し,その製作を実施した。新型センサの校正,性能評価は当初予定の計画期間内には実施できなかったため,研究期間を1年延長する判断をした。
また,微量な熱量計測には,温度変動を抑制する多重恒温槽技術が必要であり,これまでアナログ制御回路を用いた温度制御を4重の恒温槽に対して実施してきたが,装置の改良に伴う分解・組立に際して,適切な制御パラメータを決定するには,数日におよぶ時間がかかっていた。そこで,マイコンを使用したデジタルPID制御の導入を試み,パラメータ設定の時間短縮が数時間レベルでできることを確認した。また,温度スキャンの導入にも,デジタルシステムは適しており,高感度サーモパイルをDSC型の計測に利用する可能性も確認できた。制御系のデジタル化の改善も多重恒温槽全体に実施するには,時間が不足していたため,次年度へ継続することとした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

計画していたバイオカロリメータの構造に関して,試料の発熱全体を捕捉することができていないことが,実験的に分かった。センサに検出されない熱量の割合は約20%程度であるが,この割合は,試料セルのサイズ,形状,センサとの熱コンダクタンスにより変化するため,バイオカロリメトリの定量性に疑問が入る,また,微量な熱量の計測限界を拡張する目的に対して,被計測熱量が試料発熱の一部でしかないという状態は問題があると判断した。このため,計画していた改良研究の前に,サーモパイルセンサを下面,上面に配置し,側面を断熱構造とした新たな熱量計を設計し,その製作に着手した。研究期間内では,薄膜サーモパイルの作成が完了したが,その較正,感度,応答性評価に関しては実施ができなかった。そこで,研究計画を1年延長し,新たなセンサを用いたバイオカロリメトリの性能改善を進めることとした。
また,恒温槽の改良に関して,これまで装置の改造,改良に伴い,4重の恒温槽を分解,組立する際に,アナログ回路で温度制御を実施していたが,適するパラメータの調整に数日レベルの時間を要しており,研究上のネックとなっていた。改善研究を加速するため,マイコンを用いたデジタル温度制御の導入をこころみ,単層の恒温槽において,最適パラメータを数時間レベルで決定できることが確認された。
以上の2つの大きな装置の変更を実施したため,研究計画と比べ,進捗状況は遅れていると評価されるが,延長した次年度で,新装置の評価を実施し,本研究の目的を達成を目指すものである。

今後の研究の推進方策

進捗状況に示した,サーモパイルセンサ部と多重恒温槽の大きな改造を実施したため,研究期間を延長した次年度には,以下の項目を実施する。
1.新型センサの計測特性の評価
2.多重恒温槽の温度制御性能の評価
3.植物種子の発芽の熱計測,ブラインシュリンプの孵化の熱計測
これらを通じて,単一生体試料の代謝熱計測が10nWレベルで実施できることの実証を目指す。

次年度使用額が生じた理由

研究遂行の過程で,予定していたセンサ構造では不十分な点があること,温度制御に関してデジタル化の導入で格段に性能向上が期待できることが分かり,予定していた研究装置に大きな変更を実施した。この変更には大きな経費はかけておらず,研究時間がかかった状況であった。このため,予定の研究期間内に研究が終了せず,1年間の研究期間延長を実施した。次年度使用額は,前年度までの研究費の残額であり,次年度に開発計測システムを評価,改善する経費として使用する予定である。

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公開日: 2021-01-27  

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