研究課題/領域番号 |
17K06214
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研究機関 | 東京都立産業技術高等専門学校 |
研究代表者 |
齋藤 博史 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 助教 (40401450)
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研究分担者 |
村田 章 東京農工大学, その他の研究科, 助教授 (60239522)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 熱工学 / 流体力学 / 可視化 / 伝熱機器 / 気液二相流 |
研究実績の概要 |
コンピュータやパワーデバイスなどに代表される電子機器は,電子素子の微細化に伴う高密度実装および高性能化に伴い,発熱密度は増大の一途をたどっている.これらの熱を取り除くために一般的に用いられてきた空冷や液冷による強制対流冷却の冷却性能は,限界に近づいている.この発熱体からの除熱のために高い熱輸送能力をもつ熱輸送デバイスが必要となっているが,現在幅広く利用されている一般的なヒートパイプは,高い見掛けの熱伝導率を有するものの小径化に伴い熱輸送能力は低下し,ある一定の入力熱流束を超えると封入作動流体が蒸発部で完全に気化してしまうドライアウトが発生し,急激に性能が低下するといった問題がある.そこで,本研究で提案する加熱・冷却ヘッダを並列に並べられた複数の細管でつないだ構造をもつ並列細管熱輸送デバイスは,内部に封入された作動流体が気液の相変化による上昇流および下降流を個々の細管で非定常に行い作動流体を循環させ,より高い実効熱伝導率と熱輸送量を可能としている. 3年の研究期間の初年度は,本研究で用いているプレート型並列細管熱輸送デバイスが,金属プレートにエンドミル加工により溝加工を行いヘッダ部および細管部を造形した構造となっている特徴を活かし,プレート型並列細管熱輸送デバイスの薄型化の限界を調べるため,ヘッダ部および細管部の溝深さを変化させ,それらが熱輸送特性に与える影響を伝熱実験と内部流動の可視化実験を行い評価した.その結果,単に溝深さだけを小さくすると加熱部ヘッダから冷却部ヘッダへの液戻りが十分に行われず,ドライアウト限界が低下することがわかり,その対策として溝幅を大きくし細管部断面積を維持することで,熱輸送限界の低下を抑制できることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プレート型並列細管熱輸送デバイスについて,ヘッダ部深さ2mm,細管幅2mm×細管溝深さ2mm,1mm,0.5mmの3形状,ヘッダ部深さ1mm,細管幅2mm×細管溝深さ1mm,0.5mm,細管幅4mm×細管溝深さ1mmの3形状,ヘッダ部深さ0.5mm,細管幅2mm×細管溝深さ0.5mmの1形状,合計7個の幾何学的形状の異なるテストコアを作成し,伝熱実験及び流れの可視化実験を行い,熱輸送特性を調査した.実験結果より,ヘッダ部深さおよび細管部溝深さを単に小さくした場合,加熱部ヘッダから冷却部ヘッダへの液戻りが十分に行われずドライアウト限界が低下することがわかり,その対策として細管部溝幅を広げ細管断面積を維持することでドライアウト限界の低下を抑制できることが分かった. パイプ型並列細管熱輸送デバイスについては,基本形状(ヘッダ内径6mm,細管内径2mm,細管本数6本)について実験装置を完成させ,動作確認のためエタノールを用いた伝熱実験を行い,HFC冷媒およびHFO冷媒使用のための準備を整えた.
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今後の研究の推進方策 |
初年度に作成したプレート型並列細管熱輸送デバイスについては,ドライアウト発生原因である加熱部ヘッダから冷却部ヘッダへの液戻りの不足に着目し,濃度差マランゴニ対流の効果による液戻りの促進を考え,アルコール水溶液を用いた2液混合液体を用いた実験を行い,熱輸送特性の変化と熱輸送性能向上を目指す.パイプ型並列細管熱輸送デバイスについては,従来型のR134aに代表されるHFC冷媒ならびに低環境負荷冷媒であるHFO冷媒を使用した実験を行い熱輸送特性の評価を行う.これらの実験を行うにあたり,これまでの2班体制から3班体制へと体制を強化し,研究ペースの向上を図る.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度はプレート型およびパイプ型並列細管熱輸送デバイスのテストコア及び実験装置製作に重点を置き,これまでに行われてきた計測手法を用い熱輸送性能と熱輸送特性を評価した.それらの結果を参考に当初計画の多点同時温度計測用データロガーの仕様を最終決定する計画であったため,そのための購入費用は次年度に繰り越すこととした.
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