研究課題/領域番号 |
17K06218
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
安藤 麻紀子 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (60748094)
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研究分担者 |
永井 大樹 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (70360724)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 逆止弁 / 自励振動型ヒートパイプ / スタートアップ |
研究実績の概要 |
逆止弁付き自励振動型ヒートパイプ(Oscillating Heat Pipe with Check Valves,以下,CVOHP)では,初期気液分布によってスタートアップしにくい現象が確認されている。そこで,「何がCVOHPのスタートアップのトリガーになっているか」を明らかにするため,CVOHPの数値解析モデルを用いて流路内気液挙動の解析を行った。CVOHP解析モデルは内径0.8mm, 長さ300mm, 作動流体はHFC-134aで,封入率45%とし,特にスタートアップに不利だと考えられる低熱負荷条件下において解析を行った。その結果,スタートアップのトリガーはCVOHPの加熱部で生じる核沸騰であることが確認され,数値解析モデルと同等寸法の供試体を用いた可視化実験においても,それを裏付ける挙動が確認された。このことから,スタートアップには「作動液を加熱部上に存在させること」が必要条件であることがわかった。 したがって,スタートアップ特性を向上させるためには,たとえ作動液が冷却部側に偏在したようなスタートアップに不利な初期気液分布であっても,作動液を加熱部に到達させる必要がある。そのための策として逆止弁配置に着目した。数値解析検討の結果,逆止弁をCVOHPの冷却部側に配置することにより,加熱開始後に生じる作動液の微小な振動を一方向に促進し,作動液を加熱部へ到達させることでCVOHPのスタートアップにつながることがわかった。逆止弁配置によるスタートアップ特性向上効果を確認するため,逆止弁配置が異なる供試体を用い,スタートアップ及び定常動作時の熱輸送性能の評価実験を行った。その結果,逆止弁を加熱部側と冷却部側の両方に設けることにより,定常動作時の高い熱輸送性能とスタートアップ特性向上を両立できることが確認され,逆止弁配置がCVOHPの特性向上に有効な策の一つであることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度に明らかにすることを目標としていた「何が逆止弁付き自励振動型ヒートパイプのトリガーになっているか」については,数値解析と可視化実験の両方の結果から,加熱部で生じる核沸騰であることが確認できた。また,特性向上策の一つとして逆止弁配置によるスタートアップ特性向上策を考案し,その効果を数値解析及び実験によって検証した。その結果,逆止弁を自励振動型ヒートパイプの加熱部側と冷却部側の両方に設けることにより,スタートアップ特性向上と定常動作時の高い熱輸送性能の両立に効果があることを確認するなど,一定の成果を上げたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究の結果,逆止弁を自励振動型ヒートパイプ(OHP)の加熱部側と冷却部側の両方に配置することにより,スタートアップ特性向上と定常動作時の高い熱輸送性能を両立できることを確認した。一方で,逆止弁個数の増加はハードウェアの信頼性の観点では不利な方向に働くことから,逆止弁のみに依らないスタートアップ特性向上策がより望ましい。 OHPを確実にスタートアップさせるためのアプローチとしては,「初期の気液偏在を起こさない方法」あるいは「気液偏在したとしてもスタートアップする方法」が考えられる。平成29年度に行った逆止弁配置による特性向上は後者に該当する。 今後の研究においては,より積極的なスタートアップ特性向上策として,初期の気液偏在を起こさない方法を探索する。特にOHP内の表面特性に着目する方針である。表面の濡れ性による気液分布の制御により初期の気液偏在を抑制し,スタートアップ特性向上を図る。また,表面粗さ・濡れ性の制御による沸騰伝熱特性向上により,定常時の熱輸送性能向上が図れるのではないかと考えている。数値解析モデルを用いてその効果を検討するとともに,表面特性が制御できる逆止弁付きOHPを用いて実験を行い,その効果を実験的にも検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は研究分担者との打合せを主にテレビ会議で行ったことにより、旅費の使用額が年度当初の見込みより少なかったため、次年度使用額が生じた。 当該助成金は平成30年度の旅費の一部として使用する予定である。
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