研究実績の概要 |
逆止弁付き自励振動型ヒートパイプ(Oscillating Heat Pipe with Check Valves, 以下CVOHP)では,初期気液分布によってスタートアップ特性が影響を受ける。特にCVOHPの冷却部側に作動液が偏在している場合には最もスタートアップしにくい。このような場合でも確実にスタートアップさせると同時に,定常状態における高い熱輸送性能を両立する方法が求められている。 最終年度は,前年度に製作した可視化用金属製CVOHPを用いてスタートアップ特性向上と定常熱輸送性能の両立の観点から実験的検証を行った。これまでの研究で,逆止弁を全て加熱部近傍に配置した場合はスタートアップしない条件下でも,逆止弁を全て冷却部近傍に配置するとスタートアップすることが確認されている。一方,逆止弁は加熱部の圧力上昇によって生じる気液の流れを一方向に整流する役割を果たすものであり,逆止弁が加熱部から離れた位置にある場合はその効果が薄れ,定常熱輸送性能の低下が懸念される。そこで,逆止弁を加熱部近傍と冷却部近傍に交互配置することにより,スタートアップ特性向上と高い定常熱輸送性能を両立できるのではと考えた。実験の結果,事前の予想通り全ての逆止弁を冷却部近傍に配置した場合には定常熱輸送性能の低下が見られたが,交互配置の場合は,ほとんど定常熱輸送性能の低下は無く,加熱部近傍に配置した場合とほぼ同等の性能を発揮することを確認した。また,逆止弁配置の違いによりCVOHP内の流速に差が生じることが,気液挙動の観察からも確認されている。このように,スタートアップ特性の向上と高い熱輸送性能を両立させるためには,逆止弁を交互配置にすることが最もバランスの良い方策の一つであることが確認された。今後,より広い条件下での評価を行うことで,CVOHPの最適設計に資する知見を得ることができると考える。
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