研究課題/領域番号 |
17K06219
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
本田 真也 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (90548190)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 熱可塑性複合材 / プレス成形 / 深絞り成形 / 曲線状繊維 / 座屈強度 |
研究実績の概要 |
昨年度はファイバー縫付機(TFP;Tailored Fiber Placement)により,炭素繊維束(CFトウ)を熱可塑性シート基材に直接縫い付け,加熱プレスにより基材部をCFトウ内に含浸することで,TFP技術を用いた熱可塑性の積層複合材の作製に成功した.また,基材シートとして,ポリプロピレンシートにマレイン酸変性ポリプロピレンを重量比0.5%で混合することで,接着性の改善や樹脂の溶融粘度の低下し,成形後の熱可塑性複合材の機械的特性が改善されることを確認した.本手法で作製した熱可塑性複合材の振動特性についても実験により評価し,他の手法により作製した熱可塑性複合材と同等の機械的特性を有していることを確認した. 2018年度は,作製した熱可塑性複合材の熱間深絞りにより円筒部材を成形した.深絞り後の円筒部材の座屈強度に対して有用に働くように,予め熱可塑性積層板にはTFP装置により以下のような2種類の強化繊維を部分的に配置した形状とした.(1)円筒部材のフープ層(円周方向に強化繊維を配置)になるように同心円状に繊維を配置,(2)円筒部材のストレート層(高さ方向に強化繊維を配置)となるように放射線状に繊維を配置. 圧縮試験の結果,どちらの部分的な強化がない部材と比べて高い圧縮強度を示し,ストレート層よりもフープ層を有する部材が高い圧縮強度を示すことがわかった.また,有限要素法により,線形座屈シミュレーションを行った結果も実験結果と同様の傾向が示すことが確認された.そのため,フープ層(0度)とストレート(90度)層の間で様々に積層構成を変化させたシミュレーションを実施したところ,-15度や-5度の繊維配向角で座屈強度が最大となることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度には,提案したTFP技術を用いた新たな熱可塑性積層複合材の作製手法が有用であることを確認し,2018年度はTFP技術独特の曲線状強化繊維配置により,深絞り成形後の座屈強度に有利な繊維形状を有する三次元部材が作成できることが確認できたため.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,2018年度と同様の手法によりチャネル型のストリンガーを模したコの字断面を持つ部材を深絞り成形により作製し,実験結果をシミュレーションにより予測できるかどうかを確認する.シミュレーションにより作製部材の曲げ強度が予測できることが可能であれば,シミュレーションにより得られた主応力方向に部分的に曲線状繊維を配置することで,三次元構造部材の最適な曲線強化繊維配置の算出を行う.得られた最適設計案をもとに供試体を作製し,様々な強化繊維を有する供試体と比較することで,最適設計案が効率的に曲げ強度向上に貢献することを確認する.
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次年度使用額が生じた理由 |
地震など災害の影響で出張をキャンセルした. 次年度は別途,国際学会に参加することで繰り越し額を使用する予定である.
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