研究課題/領域番号 |
17K06220
|
研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
星野 洋平 北見工業大学, 工学部, 准教授 (90374579)
|
研究分担者 |
鈴木 聡一郎 北見工業大学, 工学部, 教授 (30250541)
羽二生 博之 北見工業大学, 工学部, 教授 (70172955)
高井 和紀 北見工業大学, 工学部, 准教授 (50271755)
楊 亮亮 北見工業大学, 工学部, 助教 (90773739)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ブームスプレーヤ / アクティブ振動制御 / 回転型アクティブ動吸振器 / 小型低出力除振装置 / 小型動吸振器アレイ |
研究実績の概要 |
この研究の目的は、農業用ブームスプレーヤに小型低出力のアクティブ動吸振器を多数配置することでマイクロ動吸振器アレイを形成し、必要な振動エネルギーの吸収率を確保することでより低振動で安定かつ超大型なブームスプレーヤの実現を可能とし、大規模農業において問題となる農薬散布作業を格段に効率化することである。平成29年度は、これまでに構築済みの回転型アクティブ動吸振器(Active Wheel Damper)AWDに対し、回路やコントローラーで構成される制御システムを簡素化し、小型低出力で低コストのDCモーターでの動作を可能とすることで小型軽量化を実現し、最終的な研究目的を達成するために必要な小型低出力のAWDを構築した。そして、単体での除振実験を行うことで、除振性能を評価した。この結果、小型の片持ちはりに対して小型低出力のAWD単体の動作によって明確な除振効果を確認した。得られた成果はこの研究の根幹を成す重要な成果である。しかしながら、小型低出力のAWDの構築に時間を要したうえ、この研究の特性上、多数の小型低出力AWDをすべて同型でそろえて構築しなければならず、ある程度の数量を容易に調達できるセンサーやアクチュエーターならびにマイコンの選定が想定より難しく選定に時間を要したため、複数台の小型AWDを用いた小規模動吸振器アレイによる振動制御実験の実施および小型AWDアレイの最適取り付け位置の検討には至らなかった。研究成果については、国内で有数規模の日本機械学会Dynamics and Design Conference D&D2017で発表を行っただけでなく、日本農業新聞の記事として掲載されるなど一般に対しても広く情報を発信した。また、北見工業大学に設置されているオホーツク型先進農業工農連携研究ユニット主催の地域交流会でも発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度には、本研究の最終目標の実現のための根幹をなす、小型低出力AWD装置の構築と単体除振実験を最重要かつ最優先の課題として実施した。また、ここで構築したAWD装置は動吸振器アレイを構築するために、同型のセンサーやアクチュエーターおよびマイコンを必要数だけ確保する必要があるため、今後も継続的に調達が可能かどうかを念頭において部品の選定を進めた。これまでに構築済みのAWD装置のモーターの制御方式を大幅に簡略化するため、制御回路の設計を大幅に変更することとなったため、当初の想定以上に時間を要したが、シンプルで小型の部品のみでAWDを構成することが可能となり、得られた回路設計を基に、制御基板の量産が容易となった。加えて少数の動吸振器を適用した場合のブーム振動の数学モデルを構築し、除振装置単体での除振性能を真鍮製の小型模擬ブームの除振実験により評価し、良好な結果が得られた。しかし、計画していた複数台の除振装置の構築および動吸振器アレイの構築には至らなかったことから、この点については計画から遅れる結果となった。しかしながら、前述の通り、制御回路基板は量産が可能となったため、次年度以降の動吸振器アレイの構築の準備は整ったといえる。一方で、農業機械メーカーの協力を得ることができ、実機としては中型の散布幅15.9mのブームスプレーヤに対し、構築した小型低出力AWDを適用しての実験についても実施した。単体のAWDのみを適用した場合の実験を行うことで、当初の想定通り、実機レベルの大きさのブームに対しては小型低出力AWDでは除振効果があまり得られないことが確認できた。除振装置アレイにより大型のブーム除振が実現できれば本研究課題の優位性を実証するための比較実験となると考えられることから、この実験を前倒しして実施したといえる。以上から進捗状況を「おおむね順調に進展している。」と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度では、継続的にある程度の数量の調達が可能なセンサーやアクチュエーターおよびマイコンの選定に時間を要し、複数台の除振装置の構築および動吸振器アレイの構築には至らなかったことから、動吸振器を複数台構築するために計上していた予算に残額が生じた。しかしながら、前述の通り、制御回路基板の大幅な簡素化を実現でき、量産が可能となったため、複数台の動吸振器の量産を平成30年度初頭には開始することを計画している。当初計画についてはそのまま実施する計画のため、翌年度分の請求額について使用計画に変更はない。平成30年度には、多数の小型低出力AWD装置の量産を行う。そして事前にAWD一台ごとにシリアルナンバーを割り振り、AWD一台ごとの単体除振実験を行って、各AWD装置の除振性能評価を行う。これを基に、大規模動吸振器アレイの構築とブームスプレーヤに除振装置アレイを適用しての振動制御実験を実施する。一方で、複数のAWD除振装置の最適配置方法を検討するため、はじめに大規模動吸振器アレイを適用したブーム振動の数学モデルの構築を実施し、大規模動吸振器アレイのエネルギー効率ならびに最大性能の理論解析手法を確立する。この手法を用いて、最大エネルギー効率を実現する除振装置数や最適配置、最大除振性能を実現するための除振装置数や最適配置の理論値の導出を試みる。除振装置による除振性能評価には、ブームスプレーヤ実機を用いた実圃場での試験の実施を計画しており、本研究課題の最終目標に向けた実用に近い条件での除振性能評価についても実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度では、継続的にある程度の数量の調達が可能なセンサーやアクチュエータおよびマイコンの選定に時間を要し、複数台の除振装置の構築および動吸振器アレイの構築には至らなかったことから、動吸振器を複数台構築するために計上していた予算に残額が生じた。しかしながら、前述の通り、制御回路基板の大幅な簡素化を実現でき、量産が可能となったため、平成29年度で遅れた複数台の動吸振器の量産を平成30年度初頭には開始することを計画している。当初計画についてはそのまま実施する計画のため、翌年度分の請求額について使用計画に変更はない。
|