研究課題
本研究によって,機械構造物に埋め込み可能な自己給電型アクティブセンシング技術の開発と,それを基盤とした自己状態監視ネットワークへの展開を示すことができた.具体的には,構造中に埋め込んだ圧電体によって機械の稼働時振動から取り出した電力を,発振回路を介して圧電体に戻すことによって周囲の構造中に超音波波動場を励起する技術,および励起された波動場を用いて構造健全性を評価する技術を確立した.さらに複数個のセンサを弾性波動場を介して協調動作させる技術を開発し,孤立配置されたセンサノードからなる完全自立型の超音波アクティブセンサシステムのための基盤技術を確立した.特に最終年度は,単一の圧電素子,蓄放電制御回路,発振回路の各モジュールからなる自己給電超音波アクティブセンサの要素技術の確立を達成した.初年度に開発したラムダダイオードを用いた発振技術を任意の周波数で発振させる方法として位置付け直し,これに加えて構造物の高周波数域における固有振動数で発振させる方法を新規開発し評価した.また,二つのセンサを同時に発振させた場合に相互引き込みによる同期現象が生じることを実験的に示した.また,圧電素子が励起する超音波弾性波動を用いた損傷検出技術として,非線形圧電インピーダンス変調法による接触型損傷評価の非線形数理モデルを確立した.モデルに基づいて解析した結果,入射した超音波に対する等価剛性を表す無次元剛性は低周波振動による接触界面の相対運動と同期して変動し,さらに低周波振動の振幅の増加に対して軟化する方向にドリフトすることがわかった.このドリフト効果はこれまで本手法での損傷評価において無視されていたものであり,これを取り入れることにより接触界面での接触剛性の様相をより適切に再構成できるものと考えられる.さらに,歯車状態監視への適用可能性を引き続き検討し,実際に折損歯の検出が可能であることを示した.
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Proceedings of SPIE
巻: 11379 ページ: 1137913, 1-10
10.1117/12.2559254