研究課題/領域番号 |
17K06229
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
池田 隆 広島大学, 工学研究科, 名誉教授 (50115523)
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研究分担者 |
原田 祐志 広島大学, 工学研究科, 助教 (00456691)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 機械力学・制御 / 浮体式洋上発電風車 / 浮体式プラットフォーム / 風車ブレード / 制振 / 回転体の振動 |
研究実績の概要 |
本研究では,浮体式洋上風力発電風車の浮体式プラットフォームと風車ブレードを対象とし,風と波浪によって生じる可能性のある振動を解析的に予測するとともに,動吸振器や液体ダンパを利用して,それらの振動を抑えることを目的とし,以下の成果を得た. 1. 浮体式プラットフォームの傾き振動を制振するための補助装置として,液体容器による制振性能を理論的,実験的に調べた.浮体式プラットフォームを1自由度の傾き振動系でモデル化し,波により回転励振を受ける場合,構造物の回転中心から遠ざけて液体容器を設置する方が,構造物の振動は励振振動数のより広い範囲で抑制される.しかし,液体容器の設置位置によっては,液体が振動せず,構造物の振動を抑制できない場合があることを明らかにした.実験では,これらの理論解析結果とほぼ一致する実験結果を観察した. 2. 風速が高さに依存して直線的に変化する風を受ける風車ブレードに,1つの振子型動吸振器を取り付けた系の振動について調べた.ブレードの回転数に依存して複数の振動ピークが抑制されることが数値解析により明らかとなり,実験により理論解析結果の妥当性が確認された. 3. 高さにより変化する風と波による水平励振が風車ブレードに作用する場合の振動について理論的に調べた.ブレードの回転数をω,波の励振振動数をΩ,および系の固有角振動数をpとすると,Ω+nω=p (n:整数)の関係が満たされる付近に共振ピークが現れる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
浮体式プラットフォームの傾き振動,水平方向の風によるブレードの振動,および水平励振を受けるブレードの振動について調べるため,各場合のモデリング(運動方程式)を完成させ,それぞれのモデルにおいて数値計算によって浮体式プラットフォームやブレードの応答計算を行った.同時に,浮体式プラットフォームの傾き振動とブレードの振動を抑制するため,前者では液体容器,後者では振子型動吸振器を用いたモデルを構築し,数値シミュレーションにより各制振装置の有効性を予測した.その予測結果を検証するため,実験装置を製作して,実験によっても,制振装置の有効性を確認することができた.以上の研究成果は当初の研究計画にマッチしており,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
風車タワーが波により鉛直方向に励振される場合,係数励振作用により,風車ブレードには時間的に振幅が増大する不安定振動,すなわち係数励振振動が発生することを研究代表者らは理論解析により明らかにし,その研究成果を公表した.さらに,この理論解析法を改善して係数励振振動の発生条件を定式化するとともに,実験的にこの種の係数励振振動が発生するかを検証する.実験装置は既に作製済みである. また,本研究課題の1つに示したように,風車プラットフォームの傾きを抑制する際,ブレードのジャイロ作用によりプラットフォームにヨーイングが発生することが推測されるが,理論解析によりそのヨーイングの発生条件を求め,さらにヨーイングを抑制するための方法としてダブル翼型風車を提案し,その理論モデルを構築し,数値シミュレーション結果をもとに,ダブル翼型風車の設計指針を策定する.なお,数値計算と実験により,浮体式洋上発電風車の振動と制振について継続して調べるため,本質的な研究計画の変更はない.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた風車用電動機を未だ購入していないため,次年度使用額が生じた.次年度使用額は,風車用電動機の購入,および実験装置の製作に充てる計画である.
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