研究実績の概要 |
本年度には,3枚の風車ブレードを有する水平回転軸が水平2方向に自由度をもつタワー先端部に取り付けられた系において,ブレードに生じる振動を理論的に調べた結果,以下の成果を得た. 1. ブレードの回転と重力作用により時間的に変化するモーメントがブレードに作用するため,ブレードの回転速度をω,系の固有角振動数をpとすると,ブレードにはm(ω/2)=p (m=2, 3, 4, …)が満たされるωの付近で振動数m(ω/2)の振幅が卓越して発生する.また,3つのブレードの形状が同一の場合でも,ブレードに作用する非線形モーメントに起因して,3つのブレードの内,1つまたは2つのブレードが大きく振動する現象,すなわち局在化現象が発生することがある. 次に,浮体式洋上風車のブレード単体を対象とし,波浪により風車土台が鉛直方向に励振される場合,ブレードに生じる振動を理論的,実験的に調べた.この系の運動方程式には係数励振項と非線形項が含まれるが,線形化モデル(モデルA)および非線形モデル(モデルB)の各モデルについて考察し,以下の成果を得た. 2. モデルAに対する理論解析により,(Ω+nω)/2=p (n=±1,±2,±3, …)の関係が満たされるωとΩの付近において,係数励振作用によりブレードの振幅が時間的に増大する不安定振動,すなわち係数励振振動が発生する.ここに,ωはブレードの回転速度,Ωは波の励振振動数,およびpは系の固有角振動数を表す. 3. 実機に相当するモデルBの運動方程式にスウィープ試験を適用して直接数値積分することより,ブレードの振幅に対する共振曲線を求めた結果,線形系に対する理論解析で予測された(ω,Ω)の付近に共振ピークが現れる. 4. 実験では,上記2の関係を満たすωとΩの付近において5種類の共振ピークを観察し,理論解析結果とほぼ一致する実験結果が得られた.
|