研究課題/領域番号 |
17K06233
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
佐藤 俊之 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (40315635)
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研究分担者 |
齋藤 直樹 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (60315645)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 機械力学・制御 / 制御工学 / モデル予測制御 / 外乱推定 |
研究実績の概要 |
令和元年度は,モデル予測制御(MPC)手法と組み合わせることを念頭においた,外乱推定抑圧機構の検討とその準備をおこなった. 多くのMPC制御系設計では,積分器が自然な形で導入されるため,理論的には定常外乱に対してオフセットが生じない.しかし,メカトロニクス制御をおこなううえでは,この積分動作に基づく外乱抑圧は高速とは言えない.また,位置制御系では,制御対象それ自体に積分器を含むもの(積分性のもの)がしばしば現れる.こうした場合にMPCを適用すると,極零相殺により定常外乱に対する除去特性が失われる欠点がある.以上の欠点を補うために,外乱オブザーバを併用する方法を開発してきた.特に,1入力1出力系に対しては適用しやすく非常に効果的であることが確かめられている. 一方,MPCの特長の一つに,多入力多出力系の制御対象を直接,取り扱うことができるという点が挙げられる.しかし,制御対象が多入力多出力系の場合,1入力1出力系を前提とした外乱オブザーバをMPCと併用すること困難である.なぜならば,非正方の制御対象場合,制御対象の逆モデルを定義できないからである.そこで,制御対象の逆モデルを用いない外乱推定抑圧機構として,近年提案された未知入力推定器の適用可能性を検討した.この未知入力推定器では,外乱波形を限定する必要がない.また,既に提案されている多入力多出力系に対する外乱推定抑圧機構に比べて適用上の制限が非常に少ない利点がある.また,多入力多出力系に拡張された外乱オブザーバよりも性能が優れていることが確認されている.そこで,この新たな未知入力推定器のシミュレーション用およびリアルタイム実験用プログラムを作成し,その外乱推定機能を検証した.多リンクマニピュレータを用いた予備実験の結果,摩擦やリンク間干渉により発生する外乱を精度良く推定することが確かめられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たな未知入力推定器を実装できるようにした結果,1入力1出力系の制御対象にしか適用できなかった方法を,研究計画で予定していた多入力多出力系制御対象に拡張する道筋を開いたため.
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず,新たな未知入力推定器を効率的に設計するために,メタヒューリスティックに基づくパラメータ調整を実施する.未知入力推定器を設計するためには,評価関数内に現れる複数個の重み行列要素と,ロー・パス・フィルタのカットオフ周波数を指定しなければならない.これらの数は,制御対象の入出力数が増えるに従い,劇的に増加するため,試行錯誤で最適な設計をおこなうには限界がある.そこでメタヒューリスティックに基づく設計プログラムを作成する.次に,未知入力推定器を組み込んだモデル予測(MPC)制御系のリアルタイム制御系プログラムを開発する.こうして外乱推定・抑圧機構を組み込んだMPC制御系を用いて,多入力多出力制御対象を用いた実験を実施し,その有効性を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:消耗品が予定額よりも安価に購入できたことに加え,国際会議参加時に宿泊代の安いホテルに宿泊できたために旅費が浮いたことによる.
使用計画:令和2年度に参加する学会参加登録費,旅費および実験装置用部品の購入代金として使用する予定でいる.
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