近年,機械システムに対して省エネルギー化の要求が厳しくなっている.研究代表者は,先の研究でシリアル型ロボットに適用可能な「受動ストレージ要素を利用した省エネルギー駆動法」を提案した.そして,提案手法に基づいて省エネルギー型SCARAロボットを試作し,従来よりも大幅に消費エネルギーを低減できることを示した.しかし,位置決め精度が不十分,境界条件の変更が困難などの課題を残していた.また,提案手法はシリアル型以外の構造のロボットには適用できないという問題があった.本課題では,それらの問題を解決し,提案手法を応用範囲の広い実用的な技術として確立することを目的とした. 平成29年度は,位置決め精度の向上を図るために,適応制御法,および計算トルク法とディープラーニングを併用する制御法を提案した.また,境界条件設定の制約を緩和するために,関節剛性を自由に変更し,系の固有振動数を任意に調整できる機構を考案した. 平成30年度は,前年に考案した剛性可変機構を実際に製作してその有効性を確認するとともに,新たに二つのタイプの剛性可変機構,すなわち生物の二関節筋を模した機構,およびリンクに付加した錘の位置を変化させる機構も考案した.さらに,提案手法を閉ループ構造のシステムにも適用できるように理論拡張を行った. 令和元年度は,前年に製作した剛性可変機構を省エネルギー型SCARAロボットに実装し,実験により有効性を確認した.また,提案手法をパラレル型ロボットにも適用できるように拡張した理論の検証を行うために省エネルギー型DELTAロボットを試作した. 令和2年度は,ロボットに固有振動を生じさせるために関節からモータを外して自由関節としていたそれまでの方法を見直し,モータのゼロトルク制御により関節を近似的に自由関節とする方法について検討した.実験装置を製作し,高精度な位置決めが可能になることを確認した.
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