測位衛星システムによる測位は,その衛星の電波が届くところではどこでも測位ができる反面,建物など電波を反射する対象物がある場所では,測位衛星から到達する電波の多重反射がおきることにより,その測位値に大きな誤差を伴う場合がある.一般に,測位解を得る場合には数個以上の測位衛星の電波を受信するが,多重反射の影響を受けている衛星とそうでない衛星からの電波があることにより,この測位誤差が生まれる.多重反射の影響を受けていていない衛星からの情報により測位計算をすれば測位解の精度が高くなることが期待されるので,その影響を受けているかいないかが判別できればよいことになる. しかし,受信する電波だけでは,この弁別ができない. 本研究では,受信できたn個の測位衛星から受信情報からm(<=n)個の衛星を利用する測位解を,その組み合わせの数だけ計算し,その測位解のなかから,より確からしい測位解を拾い出すことで,その計算に用いられていない測位衛星からの電波が,多重反射などの影響をうけているものとした.より確からしい測位解を拾うために,受信機を移動ロボットに搭載し,移動ロボットのオドメトリよる自己位置との比較を行って,より確からしい測位解を拾い,その測位解と,オドメトリによる自己位置とはカルマンフィルタによる補正をオドメトリによる自己位置へ適用する枠組みを提案した. 実験の結果,期待通りの結果を得る場合と,得られない場合があり,その理由についてさらに精査をしてゆく必要があることがわかっている.本研究の成果は,2020年3月15,16日に開催されたロボティクスシンポジアにて,「GNSS測位時の衛星選択による複数測位解を別測位手段により検定する不可視衛星推定」と題して発表した.
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