研究課題/領域番号 |
17K06249
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
松井 利一 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (20302458)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 身体能力評価 / 生体運動制御 / 動作シミュレータ / 直線軌道 / 運弓動作 / 階段昇降 / 一段足上げ / 最適制御 |
研究実績の概要 |
平成30年度は,平成29年度に引き続き,身体機能劣化が生じる前の理想的動作特性を理論的に予測するのに必要な動作シミュレータの開発を行なった. 1.腕動作に対するシミュレータの開発(理想的腕動作特性予測) 腕の機能劣化が生じる前の理想的腕動作特性を理論的に予測するのに必要な腕動作シミュレータの開発を行なった.本年度は,昨年度開発した運動物体捕獲動作シミュレータの追加計算と学会発表を行ない,さらに,外側へ湾曲する通常の手先到達軌道を意図的に直線軌道にする機能をシミュレータに導入した.これにより,無意識的に行なう到達運動だけでなく,意識的に行なう到達運動のシミュレートも可能になり,シミュレータの汎用性をさらに高めることができる.具体的には,ヴァイオリンの運弓動作を例に,手先を直線的に到達させる動作の実測と動作解析を通して運弓動作の動作特徴を明確化し,この動作が理論的に再現可能な腕動作シミュレータに拡張した. 2.身体動作に対するシミュレータの開発(理想的な身体動作特性予測) 身体機能劣化が生じる前の理想的身体動作特性を理論的に予測するのに必要な身体動作シミュレータの機能を拡充するため,日常頻繁に行なう階段昇降動作のシミュレータを開発した.本年度は,足を階段の一段上へ運ぶ基本動作の再現が可能だが,再現するのに多くの情報を必要とする昨年度の最適制御モデルを拡張し,蹴上げ(一段の高さ)のみの視覚情報だけから足を階段の一段上へ運ぶ動作を自動生成する汎用的な動作シミュレータを構築した.一段足上げ動作の実測軌道の動作解析に基づいて,蹴上げ(一段の高さ)から動作生成に必要なすべての情報を予測するシステムを開発した.しかし,運動時間や経由点時間などの時間情報はばらつきが大きく,正確な予測に関しては今後の課題として残された.これが解決すれば,身体能力を定量的に評価するシステム構築に大きく貢献できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目的は,高齢者やリハビリ患者の現在の身体能力を定量的に評価するシステムを構築することである.そのためには,腕や身体の機能劣化が生じる前の理想的身体動作特性を理論的に予測可能な身体動作シミュレータが必要不可欠であり,以下の結果を得た.以上の結果から,現在までの達成度は,おおむね順調に進展していると判断した. 1.腕動作に対するシミュレータ開発 本年度は,ヴァイオリンの運弓動作のような随意的な直線手先軌道を生成する到達運動も再現可能とするより汎用的なシミュレータへ発展させた.具体的には,ヴァイオリンの運弓動作の様に,手先を直線的に到達させる動作の実測とその動作解析を通して運弓動作の動作特徴を明確化し,この動作が理論的に再現可能な腕動作シミュレータを構築した.その結果,無意識的に行なう到達運動だけでなく,意識的に行なう直線軌道の到達運動のシミュレートも可能になった.しかし,腕の理想的な動作特性を予測するためには,単に動作再現するだけでなく,到達目標点や運動時間などの情報も予測し,理論的腕動作生成が可能なシミュレータに高めることが重要である. 2.身体動作に対するシミュレータの開発 昨年度に開発した一段足上げ動作シミュレータは,動作再現は可能であるが,目標点情報などの必須情報を与えなければならない不完全なシミュレータである.本年度は,蹴上げ(一段高さ)のみの視覚情報だけから動作生成に必要なすべての情報を予測し,足を階段の一段上へ運ぶ動作を自動生成する汎用的な動作シミュレータを構築した.その結果,蹴上げ(一段高さ)のみの視覚情報だけから,ヒトと同様の一段足上げ動作の理論的生成が可能になった.しかし,運動時間や経由点時間などの時間情報はばらつきが大きく,正確な予測に関しては今後の課題として残された.これが解決すれば,身体能力を定量的に評価するシステム構築に大きく貢献できる.
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今後の研究の推進方策 |
1.腕動作に対するシミュレータの開発 今後の計画は以下の3点である.第1は,本年度構築した腕運動シミュレータ(直線手先軌道を意図的に生成する腕運動制御モデル)のデータ整理と発表,さらに,腕運動シミュレータの有効性を検証するために他の被験者の直線手先軌道の理論的再現を行なう.但し,本年度構築した腕動作シミュレータは,必要な情報(目標情報や運動時間など)を与えて実測直線軌道の再現を行なう.そこで,第2は,到達目標点や運動時間などの情報を予測する仕組みを構築し,実測軌道の再現ではなく,理論的腕動作生成を可能とする腕運動シミュレータを構築することにより,腕の機能劣化が生じる前の理想的な動作特性を予測するシミュレータへの拡張を目指す予定である.第3は,高齢者やリハビリ患者の現在の腕動作特性を実測し,腕動作シミュレータを用いて機能低下前の本来の腕予測動作と比較することにより,高齢者やリハビリ患者の身体能力の定量的評価を行なう手法を開発する予定である.
2.身体動作に対するシミュレータの開発 今後の計画は以下の3点である.第1は,本年度開発した一段足上げ動作シミュレータ(蹴上げのみの視覚情報だけから,ヒトと同様の一段足上げ動作生成が可)のデータ整理と発表,さらに,本シミュレータの有効性検証のために他の被験者の一段足上げ動作生成に適用する.但し,本年度開発のシミュレータは,動作生成に必要な運動時間や経由点時間などの時間情報の予測精度に問題があった(ばらつきが大きい).そこで,第2は,これらの時間情報の最適導出法を構築することにより,脚の機能劣化が生じる前の理想的な一段足上げ動作特性を予測するシミュレータへの拡張を目指す予定である.第3は,体を含めた一段上り動作が生成可能なシミュレータに拡張する.具体的には,体全体を持ち上げて,遊脚の足を次の段に乗せる動作の実測と再現を行なう予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:差額を0にしようとしたが,僅かに誤差が残ってしまった. 使用計画:次年度使用額は僅かであり,次年度の購入品の一部として使用する.
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