昨年度までの研究により、シリコーンゴムによるロボット用の被膜の内部に触覚センサを構成する複数の方法が確立できたため、今年度はこれを柔軟な構造のロボットに適用することを行った。具体的には、硬化阻害を利用した柔軟なロボット指機構への腱駆動メカニズムの統合と触覚センサの搭載を行った。本ロボット指の特徴は関節構造にある。3次元空間における6自由度の運動のうち、ある軸周りの回転運動が滑らかに可能である一方で、その他の5自由度の運動は弾性的に拘束される。この構造に対して一般的な腱駆動指よりも多くのワイヤを組み込むと、単純な屈曲・伸展動作に加えて、指先の接触点に生じる力やトルクに対する柔軟性をコントロールすることができる。ただし、多数のワイヤの張力の影響を全て考慮した制御器を設計・制御することは困難と予想されるため、本研究では、指構造内に組み込んだ触覚センサの出力信号を同じく構造内に組み込んだアンプ回路にて増幅し、ワイヤとして電流により収縮する人工筋材料を用いることで、負荷に対して受動的な応答を生成するシステムを採用した。 本システムを具現化するための開発事項として、シリコーンゴムの硬化阻害が発生すべき部分(関節部分)と発生すべきでない部分(触覚センサ実装部分)を分離して製造する手法の確立、硬化阻害によりワイヤ経路内に生じる未硬化シリコーンのオイルの潤滑性能を評価するための摩擦試験、未硬化シリコーンのオイルが人工筋駆動時の発熱により硬化しないかどうかを検証する実験を行い、これらの問題を解決した。 以上の研究成果の一部を国際学会にて発表を行った。
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