研究課題/領域番号 |
17K06263
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
東森 充 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (30346522)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 咀嚼ロボット / テクスチャー推定 / CNN |
研究実績の概要 |
本年度は,引き続き,人工咀嚼ロボットシステムの設計およびプロトタイプ開発を行った.ヒトの第一大臼歯から第三大臼歯に対応する樹脂製上下顎部,シリコーン製舌部,シリコーン製頬部から構成される咀嚼エンドエフェクタを設計・開発した.同時に,これを6自由度ロボットアーム+1自由度グリッパを用いて制御するための開発を進めた.ここでは,ヒトの下顎軌道を平行四辺形軌道でモデル化し,咀嚼動作に含まれる咬断・臼磨長の比を規定するパラメータを導入した.実際の食品を用いた基礎実験を行い,咀嚼回数(下顎動作回数)に対する食塊混合度の変遷を調査した.ここでは,人工食塊の状態を画像テクスチャ特徴量により定量化し,咬断・臼磨長比に対して人工食塊の混合度合いが明確にことなることを明らかにした. また,ヒトの咀嚼による食塊とロボットの人工咀嚼による食塊とを比較するために,画像処理による食塊状態の定量的評価手法について議論した.本年度は,ヒトによる食塊の解析を中心に進め,畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて,食塊画像から咀嚼クラス(咀嚼回数に基づくクラス)を推定する手法を提案した.実際の食品を用いた検証実験を行い,咀嚼回数0~30回の食塊画像を撮影し,これらを7クラスに分類し,CNNモデルの学習を行った.高々1枚の入力画像により,咀嚼クラスの近似推定が適切に可能なことを示した.さらに,ヒトの目視による推定結果と比較し,ヒトよりも高い推定能力が実現できる可能性を示した.この手法により,ロボットによる食塊再現性を定量的に評価することが期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画から細かい点で軌道修正はあるものの,全体として,おおむね順調に進展しているものと判断している.特に,CNNを用いた食塊状態評価の精度が高く,今後,咀嚼ロボットによる食塊再現性の定量的評価での活用,あるいは,食塊状態に対する咀嚼動作のフィードバック制御での活用が期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,人工咀嚼ロボットシステムの完成およびテクスチャー推定モデルの構築を目指す.人工咀嚼ロボットに関しては,歯・舌両有型のロボットの下顎運動および舌運動の最適動作設計に踏み込み,CNN食塊状態評価と組み合わせた食塊形成マニピュレーションの理論的枠組み構築を推進する.テクスチャー推定モデルに関しては,歯による咬合力および舌による舌圧分布のセンシング機能を実装し,両測定データに基いた時空間テクスチャー推定モデルの構築を推進する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度後半は食塊状態評価ソフトウェア(CNN)の開発および検証に注力しており,咀嚼ロボットハードウェアの開発に掛かる費用を一部次年度に持ち越したため.次年度における機械部品・電子部品などの購入に割り当てる.
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