研究課題/領域番号 |
17K06263
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
東森 充 大阪大学, 工学研究科, 教授 (30346522)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 咀嚼ロボット / 食塊形成マニピュレーション / CNN |
研究実績の概要 |
本年度は,咀嚼ロボットシミュレータによる食塊形成に向け,食塊状態をリアルタイムかつ定量的に評価する手法について提案した. はじめに,食塊を咀嚼回数によって定量評価する手法を構築した.まず,被験者によって試験食品を規定回数咀嚼し,吐出された食塊の画像を撮影して,これを教師データとした.食塊においては,破断片の大きさや形状などの特徴量定義は困難であるため,特徴量の学習まで含まれるDCNN(Deep Convolutional Neural Network)を活用し,食塊画像からその咀嚼回数を推定するモデルを提案した. 続いて,上記手法を実験的に検証した.試験食品は市販ドーナツ10[g],被験者は24歳の健常男性1名,1[Hz] の速度で咀嚼動作を行い,咀嚼回数0~30について25 個ずつの食塊を生成し,撮影した.DCNN の学習は,教師データを訓練/テストデータに8 : 2 の割合で振り分けて実施し,DCNN構造は,Augmented AutoEncoder(AA)に準拠した構造を用いた.推定精度は,決定係数0.75,平均二乗誤差5.1であり,咀嚼回数を適切に推定できる可能性を得た. 最後に,提案手法をロボットシミュレータの食塊形成再現度の評価に適用した.まず,前年度に構築したロボットシミュレータを用い,0~30 回の咀嚼動作における食塊画像を取得した.これをロボット食塊画像と呼ぶ.ヒトの食塊画像により作成した咀嚼回数推定モデルを用い,ロボット食塊画像の咀嚼回数推定を行った.これは,咀嚼ロボットシミュレータのヒト食塊再現度といった観点での評価を意味する.おおよそ咀嚼回数15回以下ではヒトと同様な食塊状態を再現できること,15回以上ではそれができないことが明らかとなった.以上のように,提案手法は,咀嚼ロボットシミュレータの妥当性評価に利用できることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画から細かい点で軌道修正はあるものの,全体として,おおむね順調に進展したものと判断している.特に,提案した食塊状態推定手法について,咀嚼ロボットによるヒト食塊再現性の定量的評価に活用できる可能生が明らかとなり,今後,テクスチャー推定精度向上への貢献が期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
人工咀嚼ロボットシステムの全体像について整理し,DCNN食塊状態評価とテクスチャー推定との融合について考察を深める.新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から,学会等における成果公表,および,研究室での各種実験がストップしている.本年度は,Web会議システムなどの利用によってオンライン開催される学術会議において,当研究の成果を公表,議論し,最終的に論文にまとめる.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で参加予定であった学会が中止となり,次年度に学会発表を行う際の予算(学会参加費,出張旅費)とするため.
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