研究課題/領域番号 |
17K06265
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
高嶋 一登 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 准教授 (30435656)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ソフトメカニクス / 形状記憶ポリマー / 機械要素 / ロボットアーム / 剛性制御 / 人工筋肉 / 力覚センサ / 触覚センサ |
研究実績の概要 |
本研究では、ガラス転移温度の上下で剛性の変化する形状記憶ポリマー(SMP)を用いて柔軟性と感度可変のロボットアームを開発する。本年度は前年度に引き続き、以下のように要素技術の開発を進めた。 <姿勢維持機構> 電熱線埋め込み型SMPシートを拮抗して取り付けたロボットアームの新たな関節機構を作製した結果、以前開発した機構と比較し、可動域が拡大した。また、以前開発した機構と同様に関節の剛性変化も可能であった。 <人工筋肉> 等張・等尺試験によりSMPシートを用いた湾曲型空気圧ゴム人工筋の繰返し湾曲特性を調べた結果、SMPシートを実際に空気圧人工筋の拘束部材として使用しても100回以上耐えられることが分かった。また、給排気の速度によってSMPの変形抵抗が変化し湾曲動作の挙動も変化することが分かった。 さらにSMPを用いた湾曲型空気圧ゴム人工筋の内圧と湾曲角度の特性を調べ、その特性を考慮してフィードフォワード制御に用いた式を変更した。その結果、角度と圧力の関係式を給気と排気時それぞれで設定することなどで誤差を小さくできた。また、制御周期を短くすることにより、目標角度になめらかに追従させることができた。 <ロボットの皮膚(触覚センサ)> SMPを用いた触覚センサの配線数を削減した。さらに、電熱線の抵抗値の補正を行い、温度分布の均一化を図ることができた。一方、センサ表面におもりを載せ、加熱時変形量が大きくなることを確認した。 <力覚センサ> 前年度、測定誤差と感度の評価結果が最も良好であった構造の力覚センサの小型化を検討し、センサの表面積を90%減少できた。小型化したものでも測定誤差は同程度で、感度の変更が可能だった。また、温度制御により、均一に加熱することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各要素技術を組み合わせた検討は進まなかったものの、「研究実績の概要」に記載のように各要素技術の開発・検証をさらに進めることができたため。また、前年度実施状況報告書の「今後の研究の推進方策」に挙げていた触覚・力覚センサの構造や人工筋肉の制御方法(フィードフォワードモデル)の改良や、電熱線埋め込み型SMPシートの温度制御装置へのマイコンの追加なども実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は平成29年度に引き続き、個別の要素技術の開発・検証をしたが、今後は、これまで実施できなかった各要素技術を組み合わせた人間の腕程度の大きさのロボットアームを作製し、応用形態や具体的に必要な仕様などを明確にする。具体的には、使用状況に応じて搭載したSMPの柔軟・固定状態を切り替えられるように温度制御しながら、対象物の持ち上げ・保持などを行う。このとき、提案するロボットアームの利点(例えば、「研究実績の概要」に記載したロボットの皮膚表面の変形の利用など)についても実際の動作の中で評価していく。また、SMPシートを用いた湾曲型空気圧ゴム人工筋をアーム先端に取り付け、対象物の把持に利用する。さらに随時、搭載した力覚・触覚センサの情報を利用する。 一方、姿勢維持機構・人工筋肉・センサの構造、アームへの固定方法の改良など、これまでに未解決の各要素技術の課題解消も進める。例えば、人工筋肉の動作にSMPのクリープの影響も見られるので、動作方法や構造の改良を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
人工筋肉作製用の装置の購入を年度末に検討していたが、もう少し実験が必要と判断したため。今後、さらに検討を進め、必要に応じて購入する予定である。
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